ヌーベルバーグの金字塔『勝手にしやがれ』 2023/5/22 By Leave a Comment 1960年公開、ジャン=リュック・ゴダール監督、出演ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグのおしゃれ映画にして、ヌーベルバーグ運動の代表作である 鑑賞は3回目か。今回も特別な感慨はない。いつも飛び切りセンスの良いものを見せられた満足感と、ちょっとした”疎外感”のようなものを覚えさせられるだけだ。 この主人公がどれだけ無鉄砲であっても、序盤の警察殺しはさすがにいただけない。犯罪だからではない。このノリで犯罪を起こしているのであれば、今現在シャバにいるはずがないからだ。 それ以外は特段のストレスなく観られる。車はいつもその辺で失敬して調達しているというのも申し訳ないけれどかっこいい。ベルモンドがとびっきりカッコいいので、むちゃくちゃやりながら女子にもてるのも、やっぱり無理なく見れてしまうのだ。 映画が高製作費、セット、クラシック音楽、健全などの条件下で作られていたのを、若い監督たちが低予算、ロケ、ポップス、反抗的なものに作り替えたのがヌーベルバーグや、その影響を受けたアメリカン・ニューシネマなのだろうが、ここでは特に、反抗的なイメージが全編を貫いている。 その象徴が、まだ映画も始まったばかりのタイミングで、前を向いて運転している主人公が急にカメラ目になり、”勝手にしやがれ!”と叫ぶシーンだろう。 こういう手法が初めて取られたわけではない。チャップリンの『独裁者』なんかも、同種の技法と言えばそうだが、その意味は全然違う。 『独裁者』は、ヒトラー役のチャップリンが、一番言いたいことでこちらを向いた。対してベルモンドは映画の初めにフィクションの世界に入ろうとする観客を止めた。つまり、「まあ、テキトーに観ろよ!」と言っていることになる。クールに観てほしい、そういう映画なんだ、と。・・・真逆だな。 いくつかの年代を飛び越え、しかも飛びすぎなかったのがこの作品のいいところだと、私的には思う。ゴダール監督の他の作品は、僕には”飛びすぎ”で意味が分からない。与えられる疎外感が「ちょっと」では全然なくなってしまうのだ。80点
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