『スワロウテイル』は邦画の金字塔 2023/11/15 By Leave a Comment 3度目の視聴となる。公開が1994年だから初見時は30歳くらいだったのか。さすがに少し古ちゃちいシーンもあったが、全体としての価値は衰えていないと感じた。 まず、強い円を求めて流民が群がる虚構の街イェン・タウン(東京の呼び名)で、日英中入り混じった会話がかっこいい。いや、それぞれの言語が入り混じっているだけではない。一人の人間がごっちゃ混ぜの言葉を話すのだ。 「つまり、そのreasonは什么那(シェンマナ)?」のような感じで。 特に英中は基本文型が近いから、違和感なく混ざっていてクール。それだけでファンタジーに浸れる。 実際、三上博史が偽札でひと財産作りチャラが歌うためのクラブを作る前半までは、まったく隙なくできていると言っていいだろう。しかし、後半はポロポロと撓みが出てくる。 一つはチャラとイエン・タウン・バンドの演奏をMTVのように長見せしてしまったこと。 中盤に少し緊張を解く作る狙いがあったとしてそれも悪くないと思うが、MTVはその後の進化が大きかったのと、チャラの音楽に魅力がないこともあり、結果は失敗に終わっている(と思う)。 メイン曲である「スワロウテイル・あいのうた」は日本のポップス史上に輝くと言えるくらいよい。しかし、それ以外の楽曲はたいしたことないんだな。少なくとも、この映画のレベルを下げてしまうくらいには。 それから、今観たら誰でも思うだろうが、アヘン街の表現はかなり陳腐。これは同時代のものとしてもイマイチだった気がする。ちびっこギャングたちが金集めするシーンも、これはこれでアリなのだろうが、ET的な子供向けファンタジーの作りを急に持ち込んでしまったように思えてしまう。 しかし、それらのマイナス面をすべて差し引いてもなお、あまりに魅力的な映画であることは間違いない。クールでユーモラスなその雰囲気。いかにも90年代の銃撃アクションシーン。演者では三上の飛び切りの美形、チャラの根源的哀しさ。どれも素晴らしいがやはり江口洋介だろうか。 上海マフィアの成り上がりリョー・リャンキとして登場する彼は、そのヴィジュアル、怖さと裏腹の弱者に向ける優しさ、そして男の色気で、これらメンツの中でもひとつ頭抜けた存在となっている。それを総じて評するとカッコイイ以上に“美しい”だろうか。とにかく、あまり見たことのないレベルだ。 ヘアメイクも含め、後半はボロボロと「傷」も見えるが、それでも3度目にして83点としておきたい。古臭くなく、初見であれば、間違いなく90点は超えたであろう(それは本当にはわかりはしないが)。
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