映画の”折り返し点”『ゴッドファーザー』 2023/5/22 By Leave a Comment 映画史上に燦然と輝く傑作。1920年代に形になってきた映画が実質100周年と考えるなら、本作の制作年代1972年はちょうど折り返し。まさにそういう位置にある映画だと言えるだろう。 黎明期を経て『風と共に去りぬ』などにより、大作至上主義、対抗にキュートコメディやミュージカル、クラシカル手法の音楽、と一旦”映画らしさ”が確立された後で、当然変革が起こる。 60年代のヌーベルバーグ、ニューシネマなどの名称で紹介されるその流れは、低予算、虚無なストーリー、ファッション至上、ロック音楽の起用などを特色としたが、それにグイッと棹差したのがこの『ゴッド・ファーザー』であったのであり、それに続く『スターウォーズ』からのSFブームと合流してその後の”映画らしさ”を形成したのだと思う(結構私見です)。 観るのはこれが2~3回目。ちょっと曖昧。 マーロン・ブランド―はやはり良い。裏社会の大物が、しかし家族を失った悲しみをよく表現している。つまり圧倒的に「実在感」があった。 アル・パチーノ演じるマイケルの恋愛観については、現代では厳しい評価となるのだろう。僕にとっては、まあ男ってのはこういうものだから、これまた実在感でよろしいのですが(笑) 一家の主要キャラが交渉に行ってあっさりと殺されてしまったり、妹への夫の暴力に怒った兄が街中でボコボコにやったり、シチリアで得た新婚の嫁が車ごと吹っ飛ばされる場面は、今もものすごく鮮烈であり、1970年代の人々の度肝を抜いたことは容易に想像できる。 そして、なによりラストの惨劇だろう。 邦画の傑作「仁義なき戦い」でコピーされたのをはじめ(これはこれで日本的な別の怖さがあり、本作に負けていないと思う)、静粛な場面の裏で非情な惨劇が行われている・・・という描写の、すべてのルーツと言ってよいのではないか。ちょうど昨年の『鎌倉殿の十三人』が同じような話で、主人公の北条義時が”やむをえず”粛清を繰り返すが、今日では珍しくもないその表現の、原型がこれだと思う。 しかし、お金をしっかりと使って、どの場面も本格的なことが一つのウリなら、展開が常にこちらの予想を先回り、上回っているのがその二つ目だろうが、そういう意味では再視聴であることは大きく点を下げる。 実際、今回見直して、特に+αに感動したところもなかった。こういう時の採点はちょっと心が痛みます(笑)83点
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