『ブーリン家の姉妹』は『エリザベス』の前に観たい。 2022/9/20 By Leave a Comment ちょうど『エリザベス』の前段に当たる物語と言える。 16世紀のイングランド王ヘンリー8世になかなか世継ぎが生まれてこない。 野心家のブーリン家(あまり上級の貴族でない)が長女のアン愛妾として売り込むが、狩猟で王に怪我を負わせてしまい、結婚の決まっている次女のメアリーが手当てをする。 王に見初められてメアリーが王宮に入るが、そのことで姉妹は不仲に。順調に妊娠をするもその妻断ちの間に他の女に目が映ってはと、ブーリン家はフランスからアンを保険に呼び戻す。パリの王家を見て学んだアンは手管を尽くして王を籠絡。メアリーが無事男子を生んだのに、母子ともども田舎に下がらせてしまい、キャサリン王妃まで廃位させて、自分が正妻に収まる。しかし、あろうことかアン自身も男子を産めなかった。 結局アンは近親相姦を疑われ、魔女として処刑。メアリーがアンの娘エリザベスを息子と共に育てていくことになる。 映画はここまでだが、後日譚として、ヘンリー王の後妻ジェーン・シーモアの生んだ王子がエドワード王となるも早世。そのあとを継いだブラッディ・メアリーこと、メアリー1世は廃位される前にキャサリン王妃が産んだ娘。エリザベスは、やはり世継ぎが産めず苦悩したメアリーに監禁されたあと、崩御に即して王位につき、エリザベス1世となる。 以上、もう、吐いてしまいそうなほど濃い、人間ドラマが背景になっている。 2人の主人公のうちアンは悪女と言い切ってよいだろう。 しかし、彼女にも本当は瑞々しい心根や、どうしようもない理由があった・・・とは描かれていない。それがこの映画の決定的にダメなところだ。 人間の深みがほとんど描かれていない。 二重丸はキャサリン王妃ただ一人。丸がメアリーと姉妹の母くらいだろうか。全然浅いのがアン以外にヘンリー国王(最悪)、姉妹の父と叔父。脇役も今を時めく人ばかりなのに(レッドメインやカンバーバッチ!)、そこまで深く演じられてはいない。これは致命的だろう。 歴史映画としての画面の美しさや音、つまり重厚感は申し分ない。猟奇的な演出も少なく、第一濡れ場が上品なのがよい。しかし、それでもこれだけの人間ドラマを描くのに、人間の深みがない、というのは話にならないだろう。 あるいはヘンリーやアンがリアルにそうだったとしても、現代の映画ならばそれらしく、人は描かれねばならないものだと思う。 それでも、歴史ものらしさは完ぺきだったので、70点。
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