わりと色々なところで紹介されているわりにはレビューの評価が低い。観終わって、「なんでこんなに低評価なんだ?」というのが第一声。
エリザベス1世の波乱の人生を描いた、続編があるので「前編」と言ってもよいもの。一番ややこしいのが、彼女の周りがメアリーだらけのところです。
まず、最初に女王として登場するエリザベスの姉が、旧教徒で大量殺人をしたブラッディ・マリーこと、イングランドとアイルランドの女王メアリー1世。イングランドに立ちはだかるスコットランドの王妃がメアリー・オブ・ギース。今回登場していないけれどこれも重要人物なのが、そのギースの娘でスコットランド女王のメアリー1世という具合。
「二人の王女 メアリーとエリザベス」という映画は、すっかりエリザベスと姉のブラッディ―・マリーの話だと思っていたけれど、この3人目のメアリーとの話(従妹関係)らしい。
ストーリーは、まだ瑞々しかったエリザベスが姉の死によって女王となる。当時のイングランドは国力が弱く、彼女の支持基盤も弱いので、側近からもフランスやスペインとの政略結婚を勧められるが、彼氏がいるせいもあって踏み切れない。しかし、国教を新教に戻す決断や、彼氏に妻子がいた事実、暗殺未遂事件などを経て、徐々に女王らしい覚悟と風格が備わっていき、ついにあの有名な「厚塗り姿」に至るという話。それはつまり、国家と結婚したことを宣言するいで立ちだったのだ・・・ということね。
当然突っ込みたくなるところは、あのファンデの厚み1㎝とも言われるベースメイクは、疱瘡跡を隠すためとか言われているのに、超美肌の主人公が、決意表明として厚塗りになるという設定。実際にウィキでも「史実との違い」枠で指摘されていたけれど、でも、どうかな?
そういう心理的な原因による可能性も否定できないのであり、私は演出としてアリだと思う。疱瘡跡は凹凸だから、ファンデをパテみたいに埋めたのかもしれないが、アーティスト的には「その部分だけでいいことに気づいてもいいじゃん!」とも言いたくなるし(笑)
「史実と違う」とまで言えんでしょう?
逆に、スコットランドのメアリー・オブ・ギースをエリザベスの側近ウォルシンガムが暗殺してしまうというのはあまりに乱暴な脚本だと思う。実際にそんなことしたら、政治的には大失策だったろう。
素晴らしかったのは、歴史映画に求める重厚な造り。セットや衣装、ヘアメイクに隙が無く、これぞ映画という満足感を与えてくれる。そして、主演のケイト・ブランシェット!瑞々しく、才気が輝き、そして美しい。これぞ映画女優という感じで、テレビドラマレベルの存在感とまさに一線を画している!
父王が新教を導入し、姉が旧教に戻したという血なまぐさい環境の中即位。ミーティングで「新教を選ぶ」と宣言し、敵視の眼差しが刺さる中、彼女の硬軟織り交ぜた演説が、貴族たちの心を動かしていく場面が秀逸。瑞々しさと、女王としての深刻な立場をうまく共存させることができたのは、皮肉なことに? 彼女の美肌による力も大きかったのだと思う。
ただし、ちょっと濡れ場が多いのには疑問を感じた。前半の彼女自身のそれはまあ上品だが、後半の女官たちのはちょっとエグイ。特にノーフォーク卿。あんなの必要なの?子供に見せられる年齢がぐっと上がってしまうよ・・・と思ってしまうのは、僕もすっかりパパになっちゃった? 82点
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