『プラダを着た悪魔』 2022/8/18 By Leave a Comment 人気作だがまともに観たことがなかった。というのは、飛行機の中で流して観たことだけあって。 内容は、いまさら言うまでもないだろう。 アメリカ版ヴォーグ誌の編集長”氷の女王”アナ・ウィンターをモデルにした、しかし、ひとりの新入り編集社員の成長物語。そして、その垢ぬけない新人=アン・ハサウェイがファッショナブルに変身していく姿を楽しむベタベタの女子向けごちそう映画でもある。 十分に楽しめるが、意外というほどの展開はない。 メリル・ストリープも、ちょっと無駄遣いというか・・・。彼女を起用するほどの役ではなかった気がする。 というのは、本作の編集長ミランダは、少し深みに欠けるのだ。 いくら何でも、プライベートで社員を使いすぎるし、雑誌編集に命を懸ける、というよりは、カリスマとしてファッションの世界を先導していくことに懸ける比率が高いように見えた。 実は、この前日に、アナとヴォーグ誌のドキュメンタリー映画である『ファッションが教えてくれること』を観たのだが、そこでのアナは、実に、『プラダを…』以上に人を振り回していた(!)のだが、それは、ほぼ純粋に、9月号一冊を作り上げるためであった。 ドキュメンタリーといっても、切り取られたもので、まったくのリアルではないとしても、フィクションの方が、主人公の本業に懸ける迫力を描けなかった、というのはどうよ!?と思ってしまう。 そして、最後にアンが選ぶ道は、自分はやはりこの虚飾の世界から離れよう、と、結構ミランダ世界を否定しての決断となる。これでは、だいぶ浅いことになってしまわないか? 例えば、すっかりファッショナブルになったままで、昔の生活に戻るのもよい。ミランダの最後の「みんなが望む地位なのよ」というような言葉に賛同できなかったのは仕方ないとして、ファッションを美術品以上の(あるいは匹敵する)世界と認めたまま、その元を去っていくべきではなかったか。これでは本当に主人公が「洗脳されていた」「カブレていた」だけになり、演出に大いに疑問が残る。 ・・・というとかなりのディスリで、採点も辛らつなものとなりそうだが、しかし、男性の僕にとっても変身のごちそうはかなりの眼福であり、そして、テンポや音楽など、エンタメとしての完成度が高い佳作であることは間違いない。78点
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