完璧に近い作品『ライフ・イズ・ビューティフル』 2022/5/25 By Leave a Comment これも感動ものという触れ込みで観た映画。 ショーシャンクに次ぐ2位集団に付ける作品という感じだったが、「いやぁ、こんないい映画があったのか」と。”心温まる反戦映画”といったところでしょうか。 コメディアンでもあるロベルト・ベニーニが、主演男優と監督も務めた作品。ついでにヒロインは奥さんね。 前半は、主人公が女子を見初め、あの手この手でアタックしてゲットするまでだが、その間に、彼のチャップリンか植木等か、という軽妙さやパンクさ、オッフェンバックのオペラを観に行くデート、「ボンジョルノ、プリンチペッサ(こんにちは、王女様)」という決まり文句などを仕込んで置く。 そして、後半は物語の核心たる強制収容所生活へ。彼はユダヤ人であり、小さな一人息子と共に、ナチスの手により、ゲットー?に連れていかれるが、それを知った非ユダヤ系の奥さんも、一緒に列車に乗り込む。実際に、そういう家族もあったそうですね。 老人や子供は早々とガス室に送り込まれてしまい、運よく生き残った息子の命を救いながら、しかも悲嘆にくれてしまわないように、「これはゲームだ、隠れていれば得点がもらえて勝ちだ」と壮大な嘘をつき続ける主人公。そして、女子房に入れられて離れ離れになった妻には、一瞬場内放送をハックして「ボンジョルノ、プリンチペッサ」とメッセージを送ったり、蓄音機を使ってオッフェンバックを鳴らしたりして、勇気づけていく。 この選曲センスだけでもショーシャンクと大違いだ! ここでは『ホフマン物語』より、有名な「舟唄」を使うんだけれど、これ以上ないくらいによい。 薄靄のような中、舟唄に気づいてベッドから立ち上がる奥さん。その表情から何を読み取るのか? 僕は、無事を知るとか、そういう堅苦しいことでなく、この人と結婚してよかった、という感動の表情と見た。ここだけを切り取って観ても、毎回泣けそうだ。 常に明るくハチャメチャ。それは最後まで続き、ついに背中に銃を突きつけながらも、ふざけた兵隊歩きをして、子供をゲームの一環と信じこませるという、まさに一世一代のおふざけに至るのだが、それらに説得力を持たせるためにも、前半のハイテンションかつしつこいギャグは必要だったのだ、と僕は評したいと思います。 ここのしつこさは自己満的演出だったというレビューも多かったんだけれどね。 明るく楽しく観れ、そして、明るく楽しいほど、余計に戦争や人種差別の無残さ、無意味さが浮かび上がってくる・・・。そんな映画って、作り手にとっての究極であることは容易に想像がつくが、それをこのレベルで達成してしまった作品があったとは! これをもって、現代のスペクタクルや、よくできたミュージカルアニメよりも、絶対におもしろいとはさすがに言い切れないけれど、こういうテーマの映画として、史上のベストクラス、究極にうまくいった作品と言っても過言ではないのではないかな。 ブラボー! 93点
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