『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』で今の世相を嘆く 2023/9/10 By Leave a Comment 1960年代にパイロットや医師、弁護士に偽装し、小切手偽造によって19歳までに400万ドルもの金を騙し取った天才詐欺師の実話をもとにした作品。 2008年の『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国』で全くさび付いた姿を見せたスピルバーグが、2003年の時点ではこのように瀟洒なセンスで演出していたのはちょっと意外であった・・・と言えば失礼か。 小粋で楽しく見れるが、スカスカのエンタメではなく人間味もある。ずっと追われる身であるので、切迫感や息苦しさもあるのだが、それでもレオナルド・デカプリオがパイロットなどに扮して登場するとウヮーっと気分が高揚するのはさすがに千両役者というべきか。 映画がルッキズムを遠慮なく示せた最後の年代頃と言ってもいいかもしれない。美女ぞろいの学生がCAなりきり体験で空港を闊歩し、皆が魂を吸い上げられるように高揚している間に、絶体絶命の中を逃げ切るレオ。いいな、と思う。こういう素直な人間感情を屈託なく見せられる時代がもう終わってしまったなんて、悪夢でしかないよ。 主役以外では、お母さん役のナタリー・バイという人が良かった。お金があればキラキラ輝くわがまま女の存在感。絶対に付き合えないタイプだけれど、こういう人が実在してこその世の中じゃないか。 実話だなんてマジ?と驚きっぱなしの本作中でも、最も驚いたのがエピローグ。重罪を得ながらも、服役中に特例で麻薬取締官として活躍した彼は、貨幣の偽造防止に貢献し、今(映画製作時点)は政府から毎年数百万ドルもの礼金(報酬)を与えられているという。まさに目が点ではないか!! 最近のみみっちい、大麻や不倫でアウト的風潮と比べてなんというダイナミズムだろう。 もっとシビアな犯罪を犯したものでも才能があれば巨万の富を築いて、尊敬や笑顔を向けられる対象となるのだ。 あぁ、これは完敗だな。社会として、世相として。83点
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