ガルボの『椿姫』 ディートリッヒの『モロッコ』 2022/6/24 By Leave a Comment 私たちヘアメイクの世界で、最初の銀幕スター・アイコンに当たるのがグレタ・ガルボとマリーネ・ディートリッヒの二人。その代表作で、現在容易に観れるもの・・・ということで、『椿姫』と『モロッコ』を選んでみました。 ちょっともうビックリなんですけど。 おもしろいのもそうだけれど、それ以上に、人間の描写・堀下げが浅くないことに。 映画としての価値は『モロッコ』のほうだろうね。いちいち凝ったカメラワークが多く、”活動写真”としての面目躍如といったところ。主人公のディートリッヒが、刹那で気持ちが変わってカッと行動してしまうのも、いかにもフランス女性という感じで、僕は好きだ。 ベストは有名なラスト以上に、前半のディートリッヒが初めてステージに立つシーン。2曲歌うが、そのゆったりと自信満々の振る舞いは「悠揚迫らぬ」と形容してもいいくらい。観客(役)の反応も極まてモダン。 対して、『椿姫』のほうは、もう少し普通の映画なんだが、しかしガルボの演技というか、キャラ造形が抜群にいい。娼婦だが、気品がある。命が長く持たないと思いながら、でも、享楽的に、華やかに生きようとしている。まあ、珍しい設定ではないのだが、乾いた笑い声を立てながら、ガルボが見事に演じている。 そこに彼女を慕う若いお坊ちゃんが登場し、切々と真実の愛を説かれる。もちろん彼に好感を抱きながらも、自分のような女に、そんな掛け値なしの真実の愛など巡ってくるはずがない・・・という気持ちが、彼の言葉で揺れてくる。素敵な場面だが、臭くないように演じるのは本当に難しいはずのところ、ガルボが大人の演技で乗り切って見せる。素晴らしい! 彼女たちの一つ前が、あのトーキーで目をパチクリして、首をクネクネしている世代だから、当然、この時期の女優なんてキレイなだけで、演技は浅いもんだろうと思っていた。 だから、モンローの映画なんかで、「この時代にしては」という言葉をよく使っていたが、どうも、違うんだね。それより前の世代で、ここまで行ってしまってるんだ。 シェークスピアなんか読んでも、社会や人間というものを見切る眼力が、それ以降特に向上していないように感じるが、それと同じ感覚。この時点で、役者の演技はここまで人間の深みを表現できていたんだ、と驚いてしまいました。 より泣けた『椿姫』が72点。『モロッコ』70点。
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