後編でスカーレットは金の工面がつかなくなり、妹の婚約者を奪って結婚するが、またもや夫が死亡。2度目の未亡人になるも、ついにバトラーの強烈な求愛を受け入れ、3度目の結婚、バトラー夫人となり、長女ボニーを授かる。
もともと欲望にまっすぐなスカーレットの望みを何でも叶えてくれる上、一気に子煩悩となったバトラー。理想の旦那さんを得て、ついにスカーレットは幸福を掴んだ、と見えたのですが・・・
実は彼女は、この映画の全編を通して、病的にアシュレーを恋慕し続け、そのことが徐々にバトラーを苛み、二人を破局へと導く。2人目を妊娠して、双方内心は喜びつつも、いつもの言い争いが高じて、スカーレットが階段を転げ落ち流産。愛娘ボニーが、夫婦の目の前で落馬によって死亡したとき、バトラーの精神もついに弱体化し、スカーレットとやり直すことをあきらめてしまいます。
後編で最も好きなのは、スカーレットとメラニーの友情。恋敵であるメラニーの出産を執り行い、タラまで命を守って運び抜き、その後も生活を支えたのはスカーレットその人でした。と言っても、陰ではメラニーの夫アシュレーを口説き、二人で逃げようなどと言うのだけど(笑)
そういうスカーレットをすべて理解したうえで、メラニーの彼女に対する感謝と信頼は揺らぐことがありません。この困難の中、周りの人間を引っ張って生かしてくれるのは、生命力の塊のスカーレットしかいない。そのような人物が、自分のように高邁な心の持ち主でないことはむしろ当然であり、これぞ天の配材なのだと知っていたのです。
ここ、令和のご時世にすごく大事なことだと思う。大小社会生活において、それを引っ張り、付加価値を生むのは、実は少数者です。メラニーのように、別方面からリーダーに劣らぬ価値を持つ人もいるが、むしろそれも少数で、多数者は、リーダーのお陰で楽しく生きている。
それら輝ける人は、積んでいるエンジンが違うから、悪行も付随しがち。スカーレットや信長のような暴君タイプでなく、仮に比率的に「悪」の部分が小さい人でも、そもそものエンジンが10倍あれば、一般人より「悪」の”絶対値”は大きくなるでしょう?
バトラーと結婚する前の生き延びていけるか、という生活の中、家に侵入した強盗を、スカーレットがピストルで射殺してしまう場面があります。何の音?とメラニーが表れて、あらっ、殺したのね、二人で運びましょう、片づけはしておくわね、くらいの態度。「あなたが生きるためにすることは全部否定しませんから」みたいな腹をくくった姿勢が、本当にすがすがしくて!
1930年代に原作が書かれ、39年に映画化された作品。スカーレット、バトラー、メラニーなどの人間像を描き切っていたことに驚愕し、欧米文化の奥深さに、畏敬の念を抱きました。85点
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