うちの社訓にはこんな一節があります。
●「利益」以上に「正義」を尊ぶというのが社の方針であり、個人や当社の目先の利益のために正義にもとるような行為をとることは決してあってはならない。
さて・・・
本日いらっしゃったお客様に僕が暴力を振るわれ、警察を呼ぶ事態に至りました。
40歳くらいの女性でしょうか。お母様と三重県からいらっしゃいました。目的は婚活用の写真撮影です。
最初からちょっと意思の疎通が難しくは感じたのですが、それでもご趣味を伺うとガーデニングということで少し話も盛り上がってきました。その際に、眉を処理しながらスタッフ間で話が少し脱線気味に広がってしまったのですが、実はその瞬間まさに気を悪くしていた、ということを後から知ることになります。
その後、メイクについてのクレームをいただきましたが、それらもすべて写真撮影上はプラスになると考えていると説得していて納得していただきました。その後、撮影から写真選択中は上機嫌のように見えていた。
店長の村瀬が後から「先生、撮影中すごく盛り上げて頑張ってましたよね」と言ってくれたけれど、特段そういう意識はなかったです。それは勝手に村瀬が「先生クレームで少しテンション落ちてそうだな。」と予見していたからそう見えたのでしょう。僕もプロですから、サービスは全力投球。いつものように魂を削るように、です。
そして、次の方の撮影中にお帰りとなり、エレベーターホールまでお見送りに行ったのですが、その時に突然、「眉毛を処理するときに手荒く、スタッフ間で雑談をしていたのは不愉快でした」とクレームをおっしゃいました。僕はとりあえずのあいまいな微笑みを浮かべながら、必死でその場面を思い出すのですが、眉毛処理は本気ですし、雑談もしていないので答えようがありません。
あっ、あの会話のことか?と目鼻がついてきたころには、お客様はぶち切れ状態です。「あなたは写真撮影はうまいが、あなたのメイクは下手くそです!」と血相変えて叫ばれました。
そして、「謝れ!」 と言う。いや、省略してますけど、かなりの雑言を吐きながらです。
僕は、相手方の言い分にどのような妥当性があるかを、頭をフル回転して考えます。
でも、ほとんどそれが見当たらない。そして、お客様がさらに店長を呼びつけて大声で謝罪を迫っている姿を見て、「あぁ、こりゃもういいわ」と思いました。まともに取り合う話でもないと判断したのです。
「すみませんでした!」と反省のこもらない声で言って、「もうわかりましたので、お引き取り下さい」と言うと、これで相手が完全にプッツン来た。
「おまえアホやろ!」とか「ぶさいくめ」とか、子供じみた言葉を連発。僕も「わかったから、もう帰ってくれ」とフォトスタジオに入ったのだけれど(お客さん待たせてますしね)、ついにはスタジオにまで入ってきて、罵詈雑言吐きながら、傘で4~5度殴りつけてきて、僕がカメラを持っていたせいもあり、そのうち1回は防ぎきれずに頭部から肩にかけて当たりました。他も腕には当たっていて、スタッフの目撃によると、傘の持ち手がそのために破損していたそうです。
3度目の暴力のあとくらいに、警察呼ぶよ、と受話器を取っても「呼んでみんかい、アホ!やったらええやないか!」などと喚くので、やむを得ず警察を呼びましたが、するとさすがにビビって逃げようとする。
警察につながった電話を片手に、「ちょっと帰らないでください。もう警察が来ますから」と、エレベーターに割って入ると、今度は母親が「あんたが悪いんやろ、帰るのに邪魔するな」と必死の力で僕を押し戻す。「いやいや、ちょっと待ってくださいよ」と押しとめる僕の脇腹に、娘が蹴りを2~3発。そして、勝手に母親が倒れたら「わ~っ、今暴力を振るわれました!」だって。
どんな三文やくざですか~wwww
とにかく、エレベーターは僕が阻止するので階段を使って帰ると言い、そこまではさすがに止められないので、逃亡を許し、その後に警察が到着となりました。
警察の方には、被害の小ささに比して、事件にしてしまうと面倒ですよ、と常識的に諭されたのですが、それも重々承知しつつ、でも僕はこう考えるのです。
こういうのって許していいのかな?
普通はサービス側が平身低頭で謝って終わり、でしょう。でもね、サービスをする側はそれなりにはへりくだるとしても、僕たちも同等に人間なのですよ。
僕に適切に謝罪させる時間も与えず、罵詈雑言に至って、それを思いがけずぞんざいに返されたら、ついには暴力に至る。
これを許すのは著しく社会正義に反する気がするんだな。誰かがやらなきゃならんのじゃないか、というね。
僕にはいっぽうで「女性のやることは全部許してあげたい」という哲学もあります。でも、これはどちらが「その女性のため」なのか、難しいよ。
次に、お客さんには十分な力があるということです。
現に、ほかのお客様にも響き渡る大声で罵倒もしたし、帰ってからもネットなどで悪口を言いまくればいい。それに比べて、僕たちはほとんど何もできません。
だから、お客側からすれば、クレームして跳ね除けられれば、そこは引き下がるしかないんじゃないですか?
そこが客の限界。
飯がまずい、接客が悪いと言い、「そうですか。じゃあもう来ないでください」と言われたら、もちろん腹は立つけど引き下がるしかない。その代わりにその店の悪口を言いふらす権利が保証されているわけですから。
僕が今怒っているかというと、正直全然そんなことはない。
というか、最初から、少なくとも警察が帰るころには、怒りなんてほとんどなく、相手への最大の感情は同情です。
いい歳をした娘のむちゃくちゃを諫めもせず、娘を守りたいが謝る度量もなくて、エレベーターから大の男を追い出そうとする、田舎のおばあちゃん(母親)。ちょっと外から見たら、悲劇なのか喜劇なのか、地獄絵なのかわからないような図でしょう。
もし僕のせいで母親があんなことをし、あんな目にあったら(自分の力でとは言え、エレベーターの壁に倒れながら頭を打ったのです)、僕ならどうするでしょう?
もう、自分が情けなくて、死にたくなるだろな。
さて、今後はどうなるか。
謝罪が来なければ立件を考えていると警察には言いました。
正直めんどくせ~。
でも、正義のためにやらねばならんかなぁ、相手の矯正のために付き合ってあげんとあかんかなぁ~という感じです。
損得ではまちがいなく損なのでしょうけれど!(笑)
みずたま says
久しぶりのコメントです。
気にいらないことがあったからといっても
人を殴ったらダメですよね。
京都店でそんな事件が起こってたことにビックリ。
私以上に精神不安定なお客さんだったのかな?
あ。もちろん私はセンセーのメイク大好きですが(笑)。
タクミ says
精神不安定か・・・。
そうなるのかな。
謝罪はなく、事態は重い方に進んでいます。
逮捕とかね。
めみ says
お体大丈夫ですか?
ほんと物騒ですね…
タクミ says
>ほんと物騒ですね…
なんのこっちゃ(笑)
maya says
世の中にはおかしな人がいますね。しかし、その女性の目的が婚活の写真というのが笑えますね。よっぽど婚活に必死なのか。いろいろ考えてしまいました。でも、こんな人と結婚する人はいないとは思いますが、大変でしょうね。
タクミ says
そうですね・・・
最初からちょっと(僕にとっては)難しい感じはありましたから、相手にもなんらかのものは伝わると思います。まあ、個性ですかね。良し悪しは別として。
逆に、途中まではまるっぽ普通に柔らかい印象で、突然エキセントリックになったとしたら、余計に婚活としては恐ろしいですねw
。 says
私も以前お見合い写真をこちらで撮影してもらったものです。たくみさんは、質問や会話の中からイメージして写真をとるスタイル?なのか、いろいろ聞いてこられすぎて、私もちょっと不快な気持ちになりました。言い方とかもそうですが、ちょっと馬鹿にされてる!?って思うこともありました。写真じたいは気に入って感謝はしていますが…。
タクミ says
。さん、になるのかな? いらっしゃいませ。
それは失礼しました。
>質問や会話の中からイメージして写真をとるスタイル?なのか
それは当然あります。
どういう人にウケる写真を撮ればいいのか、ということを短い時間で判断していかなければならないので、結構必死かもしれない(笑)
そして、もうひとつは関西人的というか、会話に+αの華を咲かせていきたい、と思ってしまう体質なのです。
例えば普通の天気の話なんかはまずしません。それは僕自身が美容院とかでされると、ちょっと不愉快だからでもある。内容のあるところに突っ込んでこない会話なら、むしろしてくるなよ、ということですね。
もちろん導入はそれでもいいのだけれど、そこから先が通り一辺倒なら、黙っていてほしいです。
そして、僕自身は会話も含めて結構本気でやっているので、そのへんはまあ、個性で許していただきたいのです。
対して、
>ちょっと馬鹿にされてる!?って思うこともありました。
これはだいぶ問題ですね。すみません。
タクミ says
どのようなときに僕がそういう表情をしてしまうのかは、僕にも完全にはわかりません。
正直、ちょっとそう思っている時もあるかもしれない。
逆に、相手の返答が意外でおもしろすぎて、それを見破られないようにしている時もあるでしょう。
それから、意外とこれが多そうなのですが、何かがトンチンカンに思えるときは笑いをこらえています。簡単な例で言えば、かっこいい人が好みと言いながら、タレントではぶさメンを挙げてくる、とかね。
その中でも一番良くないのが今回の記事のようなパターンなのでしょう。
正直とっつきの悪い人で、最初の方にこちらの気持ちが萎えかけている。しかし、それではいかんと一生懸命自分を奮い立たせて話しかけるが、もうどことなくよそよそしいというか逃げ腰感が出ていて、会話がどんどんしけてくる、というパターンですね。
もちろん、そうやって始めた会話からでも、花が咲いてくることの方が圧倒的に多いのです。言葉を交わす事にはそういう力がありますからね。
でも、それでもイマイチな場合というのがどうしてもできてしまう。このお客様の場合は、撮影中にそれが挽回できたと思うのですが、でも、メイク中のことを「結果がよかっただけに残念なのが・・・」と言い足さねば収まらなかったのでしょう。
暴力以外は、よくわかる話でもあるのです。
。さんに対してはどのケースだったかはわかりませんが、僕がなんらか至らなかったという可能性はやはりあると思います。すみません。