めみちゃんへの本の紹介ついでに(笑)、ここ1~2年で読んだもので、南青山店に置いてあり、多分紹介漏れだよね~というやつを、さらっとまとめてしまっておきます。
ひとつくらい再出かもしれないが、ご勘弁を。
恩田陸著『ユージニア』
一読すれば誰でもわかるような力作。著者の気合が漲っている。これは、桐野夏生さんの『グロテスク』とも比ぶべき作品だろう。この人の作品でとりわけ良いのは、その雰囲気の良さ。ミステリアスな浸り系サスペンス調と言えばそのとおりなのだが、ベタになってしまわないのは、女子系ファンタジーの色合いが適度に混ざっているからだ。
ただ、結末がすっきりしないパターンは、やはり好みの分かれるところかな。確かに、犯人が分かって、トリックが分かってすっきり、で終わってしまっては雰囲気が壊れるような作品ではある。サスペンスの形を取っただけで、文学なのよ、と言われればそうだろう。でも、なんだかなぁ・・・。
冲方丁著『天地明察』
岡田君主演で映画になった作品。まあ有名作ですよね。碁打ちにして天文学者である渋川春海が主人公。天才的な棋士でありながら、数学や暦に興味が向いてからは碁への興味を失い、新たな道に没頭して最後には大輪の華を咲かせるというのは、ちょっと穿った言い方をすれば「いかにも現代的な歴史物」とも言えよう。内容は重厚にして本格的。登場人物の情熱の熱さにぐっとくる良作であることは否めないものの、どこか心に残らないのは、そういうあざとさを僕の場合は感じるからかもしれない。
勝気なヒロインはもちろん、ワン・ピースに出てくる巨人よろしく、いつまでも勝負を繰り返しているようなロマンばか老人がいたり、とヒットするための轍はしっかりと踏んでいる。僕のように、多読でちょっとひねくれた読者ではない方にお薦め、といったところかな。
貴志祐介著『雀蜂』
ひと言でいえば、雀蜂に襲われるパニック小説。でも、なかなか手が込んでいて、最後にはオチもあって、と満足感は高い。パニックものと言えば、僕は若いときに読んだ『君よ憤怒の河を渉れ』(西村寿行著)を代表的に思い出し、また結構な有名作らしいが、『君よ・・・』がありがちな困難が次々来るタイプ(鮫も熊も、みたいな)であるのと対照的に、雀蜂に絞って1冊持たせるというのは作者の力量ゆえだろう。一気読みは間違いないし、そんなにバカバカしくもない。
以上3点。いずれも読後しばらくたっているので点をつけませんが、3点とも水準以上の作品です。
読書で浸りたい人には『ユージニア』、真面目な話に感動できるよというタイプには『天地明察』、一気に読んでストレス解消という向きには『雀蜂』がオススメ、でまとめておきましょか。
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