恒例の書評をさせていただきます。
まず、今回のピカ一は、なんと言ってもこれでしょう
①佐藤多佳子著「しゃべれども しゃべれども」・・・85点
映画は未見ですが、この小説はすばらしいです。
著者の佐藤多佳子さんは、児童文学から入り、「大人向け?」はこれでデビューくらいらしいですが(間違えていたらごめんなさい
ご存知落語のお話で、主人公は一本気の不器用男。
笑いあり、涙あり、恋ありの人情話であり、「ハラハラドキドキ中毒」に陥っていない人ならば、誰でもが楽しめて感動できる良書と思います。
この佐藤さんという人はすごい人だ!
②金城一紀著「FLY,DADY,FRY」・・・80点
駄目なお父さんが身体を鍛え、格闘技を学んで娘の敵を討つ話で、文句なく面白い内容です。
ただ、出世作の「GO」に比べると、断然テクニックが増して滑らか感が出た反面、この作品は「毒」や「牙」を失ってしまっています。
心に残るかどうか・・・という意味では、僕は断然「GO」のほうを採りますね
③乾くるみ著「イニシエーション・ラブ」・・・75点
④歌野晶午著 「葉桜の季節に君を想うということ」・・・75点
両書とも「仰天モノ」の傑作といって良いでしょう。
前者は、読んでる間、ず~っと、信じられないくらいつまらない恋愛小説なのですが、最後の1ページくらいで、小説世界は180度の変化を遂げてしまいます。
後者はそれに比べると、全編なかなか読ませますし、最終盤のびっくりがなくとも十分に許せる出来です。ただし、「仰天度」は前者が上ですね
ただ、こういう乙一さんに代表される、「文章であるが故のトリック」を用いたミステリーは、(確かに、クリスティの「アクロイド殺人事件」やレヴィンの「死の接吻」あたりの古典にも、その萌芽は十分に見られたのだけれど)ミステリーにおけるトリックが、昔の「本格派」80年代に復活した「新本格派」を通じて、もう“出切ってしまった感”があり、こうならざるを得ない気がして物悲しい気も・・・
特に「イニシエーション・・・」とか、“僕としては”読後感も悪いしなぁ
でも、ホント「びっくり
⑤恩田陸著「夜のピクニック」・・・70点
「6番目の小夜子」・・・65点
「三月は深き紅の淵を 」・・・40点
この人も流行作家の代表ですね。
前2者は学園モノ。「夜の・・・」は、恋愛がらみでもないのに読ませてくれますし、「6番目の・・・」は、僕らが子供の頃のSF学園モノ仕立てで、懐かしい感じ。読後感はどちらも爽やかです
ただし少し女性向けですね。
「三月は・・・」は、最初が持って回りすぎてて、読み続けられませんでした。
前の二つもめちゃめちゃ良くはなかったので、「無理して読んでも・・・」と思っちゃった
⑥桐野夏生著「OUT」・・・70点
この作家は自力、演出力ともに問題ないので、多分どれを読んでも納得できるレベルでしょう。
ただ、僕としては、前に読んだ「柔らかな頬」の方がだいぶ良かったですね。
さえない主婦が集まって犯罪に手を染める話ですが、リーダー格の女性の凛々しさはさすが。こういう女性を書かせたら天下一品の人だと思いますね
⑦田辺聖子著「ジョゼと虎と魚たち」・・・70点
以前三色スミレちゃんにお薦めいただいたので読んでみましたが、作家さんの自力という意味では全く仰るとおりでした
鋭い洞察力から生まれる文体、甘ったるくない内容。これほどの人が昔からいたのだな、と驚いてしまう。
ただ、こういう女性らしい心の機微や自意識は、男性の僕にはあまり関心のないところで・・・。だから、こういう点数になってしまったのですが、こういうタイプを好む女性にとっては最高の短編集であろうとは感じました。
中では、僕は表題作の「ジョゼ」が好きですね。
こういうキャラ設定だけで参ってしまいます
読んでる間、ずっと涙ぐんでました。
⑧石田淳著「すごい「実行力」」・・・65点
⑨財部誠一「カルロス・ゴーンは日産をいかにして変えたか」・・・45点
⑩植田正也著「電通「鬼十則」」・・・40点
実用書(ていうのかな?)を3冊
⑧は前回のブログで取り上げた本。まずまずの内容でしょう。
⑨は、分析もたいしたことなければ、個人崇拝の域も出ず、つまらない本です。
⑩も、「財界偉人」に詳しいオヤジが、ウンチクたれながら現代の世相や若者に対して慨嘆するだけの、ほとんど「愚痴本」で、はっきり言ってウザい。
書店にも良く並んでいますが、絶対に買わないように
てな感じです。
佐藤さんの本年度本屋大賞受賞本「一瞬の風になれ」も、いずれは読んでみようと思っています。
もし、もう読んだ人がいたら、一応感想教えてね。
では
このさたけさん says
「猫にかまけて」「猫のあしあと」by 町田康!
ひじょーーーーーーにおすすめっす!
timo says
読んでますね~
私の場合、本を選ぶのってご飯の組み合わせと同じで、重い小説の後は爽やか感動もの。はらはらどきどき小説の後はゆったり退屈目・・・という感じで違う味のものをチョイスしてます。
なのでセンセの書評は参考にさせてもらってます
5冊色んな人の小説を読んだら次に必ず読みたくなるのは桐野夏生さん!
読んだ後はちょっと落ち込むので、お口直しに佐藤さんの爽やか小説かな
タクミ says
さたけさん、相変わらず“猫って”ますねぇ
町田康さんは、僕も気になってますが、違う本を買い置きしていちゃって・・・
でも、それが良ければ(悪くなければ)猫シリーズにも是非進みたいですね
タクミ says
そうですね、timoちゃん、僕もそういうローテーションで選んでますよ。
今までにもあなたには結構薦めてきたから、好きな作家さんもだいぶ被ってきましたよね
また、新しい作家で極め付きの人を見出しますね
ぺろにゃん says
しゃべれども しゃべれども
めっちゃ面白いです。
まだ途中・・・って言うか3分の1も読んでないけど可笑しくって・・・・
昨日寝る前なんか声出して爆笑してしまいました。
面白すぎて先に進めません。
リズムカルな文章に惹きこまれてしまいます。
映画ってどんなんだったのでしょうか?
WOWOWでしないかしら?????
タクミ says
お~っ!それは良かった
今回の中でも、この本は飛びぬけて優れていると思います。
ところが、昨日まで読んでいた「サウスバウンド」がまた良くて・・・
良書が続いたせいで、読書ブームが止みそうにありません
マンモス says
いつも楽しく読ませてもらってます。
この記事に対してのコメントではないのですが、明日5日の知人の撮影よろしくお願いしますね。
私も風邪から復活して元気に仕事しています
タクミ says
マンモスちゃんありがとう
撮影、無事終了しましたよ。
ってか、感じもいいし、やりやすい方でした。
ちょっと考えられないようなVIPをいつも紹介していただいていて、本当に感謝感謝です
話せば父親も喜ぶだろうな