これ(書評)ばかりになっちゃって、本当にすみません
最近“読書ブーム”で、適当に書いておかないと、自分が何を読んだのか、もうわからなくなっちゃうんです
食傷気味の人は、読み飛ばしちゃってちょうだいね!
でも、今回はなかなか豊作でした
①金城一紀著『GO』・・・80点
高校生が主人公の、学園、家族愛、恋愛モノで、第123回直木賞受賞作ですが、芥川賞でもよかったのでは?という純文学性もある作品です。
テーマは「人種差別」あるいは「人種とは?」という重いものなのに退屈させずに読ませるところ、前半のなにげなエピソードがクライマックスでは全部重要な意味を持ってくるところ(漱石の『こころ』みたいでした)など、すごく完成度が高い。
ところが、どの作品にもやはり残念なところはあるもので、ここでのそれは色々と“青い”こと!
実社会を落とすだけ落とし映画や小説の世界をこの上なく持ち上げちゃうところ、あまりにもかっこよいために「本人の経験が浅いんだろうなぁ」とばれちゃう恋愛描写など、30歳くらいで書いたにしても青すぎます。
そういう意味では、僕が20代で読んでいれば、100点に近い評価が出来たのでは?とも思います
②奥田英朗著『邪魔』・・・80点
リアルな刑事モノで、多くの人の「堕ちる」もしくは「流される」さまを描いていますが、なにより、この作家さんはものすごい「地力」のある人です。
『空中ブランコ』のシリーズでかる~い医学ものをやってたりするのに、ここでの作風はシリアルそのもの。
会話中に、話題に上った一単語から他の事に気持ちが移ってしまう心理描写など、人間のリアルな姿を自然に描けていて、本当にレベルが高い。
残念なのはストーリーが少し弱いところなのだけど、それだからこそ、このリアル感と合っているとも言えるのかな・・・?
いくらストーリーが面白くても、宮部みゆきさんみたいなダサくて青い心理描写では僕は読み続けられません。逆に、これくらいレベルが高ければ、「ディテールだけででも」小説は輝きますね
③真保裕一著『ホワイトアウト』・・・80~90点
こんなに面白い、日本人の書いた「冒険モノ」は初めて読みました
奥田さん同様、文章に地力があるし、ミステリーらしいあっと驚くどんでん返しもあります。
雪山の中を、テロリストからダムと人質を取り戻すストーリーは、映画化されたのでご存知の方も多いでしょう。
まあ、簡単に言えば「ダイ・ハード」みたいな話なんですが、ここで強調しておきたいのは、「いかに映画を作った人にはセンスがなかったか」ですね。
原作では、主人公は、(タフネス以外は)最後まで普通の人間だったのに、映画では「超人」に変化してしまっていた。これは絶対にやってはいけない、NG中のNGです
映画は製作段階から織田裕二君が噛んでいたそうですから、彼の感性によるのかも?僕ははっきり言って、「その可能性は高い」と思いますね
④高野和明著『十三階段』・・・75点
他人の犯罪の真相を求めているうちに・・・という巻き込まれ型のミステリーです。
これも、ちょっと僕には青い部分があるのですが、最後の方のハラハラドキドキ感は、まさに「息もつかせぬ迫力」というべきで、その点では最高のミステリーです
⑤真山仁著『ハゲタカ』・・・70点
NHKのドラマがなかなか秀逸で読んだのですが、まあ、これは「ホワイトアウト」の逆で、ドラマの方が良かったですね。
バブル期のあとに外資が不良債権整理の形で日本の資産を買い叩いていく話ですが、読み慣れない経済モノである「わりに」楽しめませんでした。
ちょっとナルシスティックにかっこつけずぎだからでしょうし、やっぱ、これもちょっと“青い”んですね。
⑥横山秀夫著『動機』・・・70点
刑事モノや裁判モノの短編集
横山さんの作品3度目の挑戦で、今まで読んだ中では一番面白かったですが、でも、もうこの人の作品はいいです!
甘ったるいんですよ絶対的に。お涙頂戴だったり、浅い自己陶酔だったり。
奥田さんのものと比べてみれば分かります。僕は「渋さ」の方を好みます。
⑦上甲宣之著『その携帯はXX(エクスクロス)で』・・・70点
どたばた脱出冒険モノというべきかな?
軽いです。山田悠介さん的に、因果律が弱いです。
でも、このハラハラドキドキ感はたいしたもの!
若いセンスで、時間をおもしろくつぶしてくれる本・・・のようなものを探している人にはバッチリでしょう。
⑧海道尊著『チーム・バチスタの栄光』・・・70点
医学モノミステリー。
本筋はかなり面白いです。
でも、くだらんギャグがほんまに笑えん!!
オヤジ的センスの極地です。「このミス大賞」受賞作なんだけど、審査員が「ユーモアがあっていい」って・・・。
は~っ
⑨平山夢明著『独白するユニバーサル横メルカトル』・・・40点
乙一的短編集です。
・・・が!センスは全然相手になりません(いくつかしか読めませんでした)。
これも「このミス大賞」受賞作。
「このミス大賞」は、その前年も『容疑者Xの献身』
だめですね、この賞!ぜんぜんアテになりません
今回は以上。
多くてゴメンナサイ。
この書評を書いてるおかげで、自分は「甘ったるい」のを好まないということが前回までに分かりましたが、今回で、自分は大概の作品を「青い」と感じることに気付きました。
これは、すなわち自分がもう“いい歳だ”ということでしょうね。
多くの作家が、僕より若かったり、若書きだったりするので、仕方のないことなのでしょうが・・・
もう少し経てば、「稚拙な中にもキラリと輝く才能を見た」なんて書評を書いているかもしれませんね
timo says
「このミス大賞」には何度騙された事か・・・
自分で選ぶとついつい同じ作家さんに偏るので、賞を取った小説なら面白いはず!と思い買うのですが、ことごとくハズされてます
もう買いません!!
て訳で、センセの「オススメ本」はあてにしてますよ~
昨日、地下鉄で本を読むのに夢中で、大事な大事なキャノンのカメラを網棚に忘れて降りてしまった!
見つかったから(遠くの駅で)良かったけど、本に夢中になり過ぎるのも良し悪しやわぁ
タクミ says
僕は、先日の吉川さんの撮影の帰りに、阪急梅田駅で、カメラ一式の入ったリュックを、網棚に忘れて降りてきてしまったましたよ。
福田と「お疲れ~!」って別れた後で妙に荷物が少ないことに気付き、降りた電車にもう一度飛び乗ってリュックを持ったときには、発車のベルがもう鳴っていて、背中に担ぐ間もなく「はっ!」と飛び降りたのですが、実はそれは隣の電車の発車ベルでまだまだ時間には余裕があり、二重に恥ずかしい思いをしました
でも、そんなことはしょっちゅうなので、まあ平気ですが
冬香 says
はじめまして 先週、お店に行きメークと写真を撮っていただきました。 関西弁で喋る内匠さんが、とっても印象的でした(私は、内匠さんを知らなかった..すいません) ブログを見たら、すごく面白くてファンになりました 大阪に住んでる友達は、内匠さんを知っていましたよ!! 沢山本を読んでいますね。どの位の期間で読むのですか?? ちなみに私は、夢中になると数時間で読んでしまいます。最近ハマったのが、『大奥』関係の本です!何故、今頃大奥??って感じですよね 長くなってしまいました。。 内匠さん!お仕事頑張って下さいね
タクミ says
冬香ちゃんいらっしゃいませ
僕は結構遅読、精読の方です。
でも、基本、休憩とって読む方で、そのために大きな時間を割くことは少ないですけどね。
『大奥』関係は全然読んだことないなぁ・・・
すごく楽しいですか??
ブログ誉めてくれてありがとう。
これはすごく嬉しいの。
だって、本音の話、何が面白いのか、自分ではちっともわからないので!
ときめき says
タクミさんが作品を青く感じるのは、‘いい歳’とかなんかじゃなくって、実年齢以上に人間力が高いじゃないかしら…って思います。
タクミ says
ときめきちゃんありがとうございます
待っていました、その言葉!!(笑)
でもね、やっぱその「人間力」は、年齢と共に鍛えられる部分も大きいと思いますよ。
僕は作家ではないから、僕に即これら以上のものが書けるわけではないけど、それは別として、こういう映画や小説や漫画の世界では、要するに、作り手の演出力や底力が、観客や読み手の「世界」を上回っているかどうかが最大のポイントになるわけでしょう!?
そういう意味では、やっぱり子供の頃、若い頃は、作り手の演出にすっぽりと収まってハラハラできることがほとんどでした。
でも、自分以上「大人」な作家の比率が年々減っていくようで・・・。これはやっぱり、年齢や仕事での苦労と共にってことなんだろうけど、自分の成長が嬉しくもあり、楽しみが減って悲しくもあります。
けいこ says
ああいう「ちょっとした時間」に読んでて
これだけの量が読みこなせて
クイックマッスル says
タクミ先生は「人間力」だけでなく、基礎「学力」も、かなりムチャクチャ高いのじゃありませんか?
なんせ、ノーベル賞受賞者最多の日本最高峰京ト大学卒でしたね。
ぺろにゃん says
そうなんや~、東大より京大の法がノーベル賞受賞者多いんですか?
知りませんでした。
三色スミレ says
書評、とても参考になります
甘ったるさの基準が何となく共感出来ます。
さて、田辺聖子の本は読まれたことありますか?
ほろ苦い甘さで、一流のパティシエが作った大人の
デザート!って感じなので、かなりお勧めです
短編集の「ジョゼと虎と魚たち」「薔薇の雨」などいかがでしょう。
stella says
私も読書は好きなので、書評ブログ大歓迎です。
近所に図書館があるので、よく通っていますが、図書館はいいんだけど、好きな作家を制覇しちゃうと、次に何を読もうかなと、読む本を探すのが大変なのです。だから、先生の書評は参考にさせてもらってます。
それにしても忙しいのに、いつの間に読んでいるのでしょうか?? 私は今月はまだ2冊目でーす。
そうそう・・、サロンでしていただいたメイクがとても気にいったので、あの顔にするために研究中です!!
みずたま says
「ホワイトアウト」かなり昔に一気に読んで、その後2回ほど読み返して大切な睡眠をうばった、大好きな作品です。日本の作家さんでこんな楽しいものを書ける人がいるんだと、初めて思った本です。90点はセンセーの中でランクの高い方なの?(笑)ちなみに、その後、映画も見ましたが、それはそれで邦画の中ではイケていたのでは、と個人的には思いますけど。映画に関しては、当時、同じ読書好きの会社の先輩のお姉さまは不満だったみたいです。人それぞれなんですね~。
タクミ says
けいこちゃんは休憩の時に何をして気分転換していますか??
僕は、漫画とか小説とか、そういうストーリー性のあるものの世界に「入り込む」方が、ぼんやりするよりも気分転換になる(ことが多い)ということに気付きました。
んで、ああいう時間でも、むさぼるように読んでいるわけです。
つまり、気分転換しているわけです
タクミ says
東大と京大の両方で教鞭をとられた先生によると、東大生の方が粒ぞろいだけど、京大生の方が少人数のとてつもないやつがいるらしいです!
まあ、ありがちな解釈でもありますが・・・
タクミ says
三色スミレちゃん、こんにちは。
田辺聖子さん、未読です。
女性の作品には弱冠凝り気味ですが・・・
でも、挑戦してみようかな!?
短編集のどちらかいってみますね。
より好きになれそうなほうはどちらでしょう
タクミ says
stellaちゃんは、好きな作家さんを「制覇」してから進んでいってるんだ!?
僕は、ひとりに付き1~2冊読めば他の人に代えていっちゃいます。
そして、好きになった人には、定期的に戻ってくる感じ。
さらに、それよりも特徴的なのは、微妙なくらいであればとりあえず3冊目くらいまではトライすることです。
代表的なのを3冊くらい読んで、それで気に入らなければ・・・その作家さんを、完全に『見切り』
ます!!
「どうレベルが低いか」あるいは「どう合わないか」を明らかにし、“時間の無駄”として、できるだけ一生関わらないようにしますね!
タクミ says
みずたまちゃん、90点は僕にとってほぼ最高得点です!
100点は、短編ならともかく、長編ではありえないと思うので、「何十冊で1冊あたるくらい」の評価ですよ
映画は、(特に途中までの)雰囲気は良かったと思いますよ。
でも、主人公の織田君が、ありえないくらいのソルジャーに変身していき、最後にはヘリコプターのプロペラで敵キャラをぶっ殺したりしているのには、本当に「前半とあってないなぁ」という違和感を覚えました。
そしたら、やっぱり原作ではそんなとんでもない展開にはなっていなくて・・・
全く予備知識の無い者に、「あれ?変な展開だなぁ」と思わせる原作の改変って、ひどくないですか!?
三色スミレ says
タクミ先生、
お返事ありがとうございます
そうですね、どちらかというと「ジョゼ・・・」の方でしょうか。
描写の素晴らしさが際立ってます。
奥田英朗、宮部みゆき、そして江國香織の書評が
私の感想と同じで膝を叩いちゃったので
多分ズレてないと思うのですが・・・
でも、お勧めするのってちょっと緊張しますね
みずたま says
>全く予備知識の無い者に、「あれ?変な展開だなぁ」と思わせる原作の改変って、ひどくないですか!?
そういわれてみれば、確かに。
けど、映画ですからね。演出家とか監督とか色々あるんでしょうね。
で、90点ってわけですね。非常に良くわかります。
タクミ says
三色スミレさん、分かりました!
「ジョゼと虎と魚たち」ですね。
読んでみます。
今ある本の後だから・・・
3~4冊後に
タクミ says
みずたまちゃん、「リアリティ」って本当におもしろいものだと思います。
もちろんとことんリアルにする手もありますが(どもったり、オナラしたりも入れてね)、その逆に全くのファンタジーであっても、どこかリアリティを感じさせることって充分に可能なんですよね!?
なんてのかな・・・
読者を、「その約束事の中に引き込む」ことができれば、かな?
そういう意味では、前半と後半の語り手が違うような作品は、最もリアリティを示せない作品といえます。
それは、例えば『ドラゴンボール』よりも、観ている者に「リアリティの欠如」を感じさせるのです。
みずたま says
なるほどね。だから私映画見ている割には、
映像しか興味ないこと多いんだ。
やっぱ、先生頭いいよねー。(イヤミじゃなくてね)
みんみんみん says
先生、お邪魔しま~す!と思って先生の
さっき交差点のとこでばったり会った、みんみんみんです。
突然腕を掴まれた時は心臓が口から出るかと思いました
最近の作家の本は好きじゃないって言ったけど、
食わず嫌いも良くないから、先生の評価の高い本でも
読んでみようかな~
過去の記事を遡ってたら、先生舞子の人なんですね。
わたしの実家からもわりかし近いのでビックリしました
マンモス says
京都店にお邪魔してきました。
とってもなごやかな雰囲気でリラックスできました。せっかく、きれいにしてもらったので友人と記念写真と思ったら、デジカメに電池を入れ忘れてました。ま、ありがちなミスですが・・・
私は、最近もっぱら歴史小説にはまってます。だから新刊は読んでません。
今は司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読んでます。
けいこ says
いよいよ夏
気分転換は、シゴトの途中でウチのアイドル
トイプードル小梅と遊ぶことですね
あと、庭と畑の草取り…
梅雨で、草がメキメキ育ってしまってるので。
こっちはなかなか気が進みませんが。
確実に、今年の夏も、上半身が鍛えられます。
けいこ says
タクミさんのブログも息抜きになってますよー
stella says
タクミ先生
返信どうもでした。
>「どうレベルが低いか」あるいは「どう合わない>か」を明らかにし、“時間の無駄”として、でき>るだけ一生関わらないようにしますね!
って、さすがです。
そこまで到達できないです。とことんやるんですねえ。
私は感覚的に「どうも合わない」「思っていたのと違うなあ」となんとなーく感性で判断しています。現在も岸恵子さんの本がいまいちで、いつ投げ出そうと思っているのだけど、先生の真似してせめて
どう合わないか答えだそうかな・・
先生が前にいっていた「さおだけやはなぜ潰れないか?」を今度読むことにしました。
こちらは合うといいなあ。
ではまた。
タクミ says
みずたまちゃん、そう言えば、「映像ばかり観てる~」っておっしゃってましたね!?
僕は基本的に程遠いタイプですが、それでも最近は少し「画として」見る傾向が強くなってきました。
「大人になってきたのだなぁ」と感じてましたが、最初からそういう人がいるんですね
タクミ says
みんみんみんちゃん、先日はばったりだったね!?
古い作家のものは読みごたえはあるけど、退屈なのに頑張ってたらストレスになっちゃって、読書自体が嫌になりそうで怖くもある。
恋愛好きな女の子と恋愛するのに似ているかもしれません。
所詮は「仕事=本業」と感じるタイプにとっての読書や恋愛は、“疲れない範囲で”するものなのでしょう。
例え最高に良いものではなくてもね
タクミ says
けいこちゃん、夏の象徴がビールってのがいいね!?
上半身を鍛えつつ読書も楽しんで、夏を乗り切ってくださいね
タクミ says
stellaちゃんこんにちは。
僕はこれで、評価の高いものを理解できない時には、自分を否定する気持ちも働いてしまうタイプなのです。
例えばピカソとか。
子供の頃は100%わかんなかったけど、それはやっぱり僕にはコンプレックスっぽい事態でしたね。
だから、途中から、「くだらないからダメ」とか「感性が合わないタイプだからダメ」とか、理由を見つけて自分にコンプレックスを作らないようにする必要があったのだと思います。
だから、あなたがそういうタイプの人でなければ、そういうことは必要ないのだと思いますよ
タクミ says
マンモスちゃん、次の記事のところでコメントしたので、うっかり見落とすところでした
司馬遼太郎さんはいくつか読んでいるのに「坂の上の雲」は未読なんです。
「竜馬」と並んで双璧なのにね。
まあ、急にぽっくりでも逝かない限り、死ぬまでに絶対に読む作品でしょう