映画史上の傑作『時計じかけのオレンジ』 2022/7/20 By Leave a Comment 言わずと知れたスタンリー・キューブリック監督の代表作品。僕たちが若い頃”必見”だった映画の一つだ。 何がどうすごいって、後世に与えた影響だろう。 素人の僕が、どの作品がどれにとか、詳しく論じようとしても高が知れているので遠慮するが、虚無的なパンクさ、ファッション、無倫理なバイオレンスシーンなどが、のちの映画に”バイブル”として踏襲されていったのは間違いあるまい。そういう意味で『2001年宇宙の旅』と並び彼の立てた金字塔というべき作品、とまでは僕にも言い切れる。 主要な音楽は全てクラシックのしかも名曲。その中を、楽し気に、完膚なきまでの暴力がさく裂する虚無感。『羊たちの沈黙』でアンソニー・ホプキンスが絶賛されたが、僕には、本作の二番煎じとしか見えなかった。最近では『007スカイフォール』のシルヴァなども同様。あるいは少年ジャンプなどでも、常にクールなままバトルに興じるのが隆盛しているが、それの元ネタとさえ思える。 そして、内容も、シニカルな表現でありつつ、観る側の心を抉りこんでくるものだ。 人間が持ってしまった悪徳を一旦すべて矯正しようとし、悲惨な結果を生んだ結果、今度はリセットされる。題名は、「オレンジ」という自然の物を時計じかけ・機械じかけにしても何もよくはない、という意味なのだろう。 それは政治権力の暴挙なのだが、さりとて、彼の本性のままに生きてもやはりちっともいいことにはならないから、ラストも何の解決にもなっていないのだ。それを俯瞰的に提示するだけ。あとはこちらがどう思うか、何をするか。 印象的な場面も多く、特に、目薬をさされながら映画を見せられるシーンは、痛々しくて身体をよじりながら観てしまっていた。 今回が2度目、あるいは3度目の鑑賞か。 年齢を重ねたせいか、以前よりも苦しくなってしまい、もう一度は観たくないかな。だがしかし、この年代として完璧な、ものすごい映画なのは間違いない。これぞ天才!というべき創作物の最右翼であろう。90点。
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