『Wの悲劇』に38年ぶりの涙! 2023/10/31 By Leave a Comment 1984年末に公開された映画で、予備校生時代に友人と観に行ったもの。38年ぶりの鑑賞ということになる。 しかし、時代ですなぁ・・・、角川映画の2本立てですよ。もう一本は『天国に一番近い島』。主演の原田知世を観に行ったのだが、終わった後に痺れるほど感動してしまったのは『Wの悲劇』のほうで。 帰りに「原田知世どうでもよくなったな」などと口さがないことを言ってた記憶があります。 恐る恐る観た2回目だったが、予想に反し?今回も超感動。 何がいいってまず脚本が非常に練れている。 夏樹静子のミステリー小説「Wの悲劇」が一応”原作”となるのだが、そもそも、その作品自体、エラリー・クイーンの有名な同名小説を下敷きにしてあり、さらに映画は、設定を変えたうえに、夏樹のストーリーを「劇中劇」で挿入していく、という凝りよう。今見返しても非常に見事なものだった。 凝ると言えば、その劇中劇を蜷川幸雄が演出しているのだが、彼はなんと、一部しか上演されないのに、全編書き下ろしたという話だ。(ついでに言えば、彼は演出家役で本作に”出演”も果たしている。えらい肩入れようではないか) 本作で最も存在感を発揮したと言われるのが三田佳子で、それまで「なんてことはない中堅女優」のイメージだった彼女は、このあと長きにわたってお茶の間の顔の一人となる。それも全く納得させられる演技だ。 でも、僕は薬師丸ひろ子と世良公則の2人もいいな。世良の役柄は今観るとちょっと世代感もあるけれど、でも、それは彼のせいではないし。とことん優しい男を表現できていたと思う。 そして音楽だ。 なんと久石譲が担当。のっけからジブリ調がさく裂するが、ちょうど1984年は『風の谷のナウシカ』の公開年でもあるそうで、彼にとっても大きな転機の1年であったのでしょうね。 それはともかく、久石がしっかりサポートする中、最後に来るのが名曲「Wの悲劇」となる。これがまた大物、松任谷由実の曲で、そう思って聞けばユーミン調でしかないのだけれど、それにしても凄まじいばかりの名曲だ。 薬師丸の透明な歌声と相まって、日本ポップス史上でも白眉と呼べるほどの同曲をラストとし、彼女のどこを見るでもない目線の、しかし感極まった表情を見ながらエンドロールが流れるのを見ていると、やはり予備校生時代の感動に近いものが蘇った時には結構驚いたし、その後2~3日、この曲が脳裏を離れなかった。 これぞ映画鑑賞から得られる幸福と言うべきだろう。88点
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