『シザーハンズ』に見るティム・バートンの才気 2023/10/8 By Leave a Comment ゴールデンコンビというのがある。ちょっと前の極めつけと言えば、スコセッシ×デ・ニーロと並び、本作などのティム・バートン×ジョニー・デップがそれあろう。 見事な映画だった。 というのは、自分の好むタイプではないのに、十分に楽しめ、そして感動の涙まで引き出されたからだ。 B級ホラーとコメディを掛け合わせたような風合いは、全体的にそうだが、前半により濃厚だ。リアリティに欠ける展開と、絵本のような色彩感が、真面目に観るような作品でもないな、と思わせてしまうことは否めない。 それでも、犯罪の片棒を担がされたデップのシザーハンズに、ヒロインのウィノラ・ライダーが「ごめんね、踏み込み先がトムのお家とはまさか知らなかったでしょ?」「ううん、知ってたよ」「嘘!?じゃあなぜ付いてきたの?」「君に頼まれたからだよ」と返され、この不気味な外見の若者に心が動いてからは、こちらもスイッチが入ったように物語に感情移入させられる。 そしてやはり製氷によって雪が舞い散り、ライダーがその中を舞うシーンだろう。この説明も不足した荒唐無稽なシーンに、しかしボロボロと涙が出てきたのには驚いた。これぞ自分の感覚を信じ、作品にぶつけきれた人間の作品ゆえなのだろう。 稀有な才能である。デップという最高の相棒を得たからでもあるが、まずここはバートンの才気を見るべき。本作こそが出世作であり、まだ巨匠とまではみなされていなかったはずの彼が、かくも風変わりな脚本を用い、絶対の自信をもってこれほどの作品を撮り切ったことの、感性、自信、精神的強さに、2度目の感動をさせられた。 僕など、アーティストとして路傍の石のような存在ながら、やはり、このような自信・精神性には大いに感化されてしまう。お客さんやスタッフが不安になる中でも飄々と作業を続け、最後にはあっと驚くメイクなり写真を生み出す。 そういうミラクルをどんどんと引き起こしたいものだと思った。85点
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