『セブン』の解釈 我ながら必読の内容! 2023/6/30 By Leave a Comment 主演モーガン・フリーマン、ブラッド・ピッド。90年代を代表する作品でありながら初見であった。 その評価を裏切らない力作だ。 まず、これほどスタイリッシュな造りでありながら今観ても全く色褪せていないことがすごい。監督のデヴィット・フィンチャーは長編第2作目ということらしいが、センスの塊と呼んで申し分ないと思う。 猟奇殺人犯を追っていくサスペンスでありストーリーもこなれているが、そこに深い精神性を探すのは、ショーシャンク同様やめておいた方がよいと思う。取り付く島もない狂信的な凶悪犯罪者がそこにいる、というだけのことでいい。 犯人にも意外な大物俳優を当て、男同士の濃厚なドラマが繰り広げられるが、ここでは誰もがぶつかる”疑問”に話題を絞ろう。キリスト教の「7つの大罪」に対する罰を与えるかたちで犯罪が起こっていくのだが、警察に追い詰められたことで犯人は計画を変更し、自らに迫ってきた刑事たちを巻き込んで、最後の2つ「嫉妬」「憤怒」の処罰を行う。 以下は強烈なネタバレである。 ネットのレビューを見ても「嫉妬」が犯人、「憤怒」がブラピの罪ということになっているが、憤怒のほうはともかく、犯人が何に嫉妬したのかよくわからない。そしてもちろん犯人はブラピに銃殺されるわけだが、その一方で彼は自らを断罪者として超然とした位置に立たせているし、7つの大罪が適用されてよい存在なのか? そこでフリーマンに「嫉妬」を当てはめてみる。一見この年配刑事は達観した様子で後輩のブラピを微笑ましく見ているようだが、実は蠱惑的なブラピの奥さんに魅了されているようだし、子供を堕胎して作らなかったことを悔いていて、彼女が懐妊したことを唯一知らされているのもフリーマン刑事だ。 記者に扮していた犯人とフリーマンは旧知の仲であったし、ひょっとして犯人が「尋ねるとあっさり住所を教えてくれた」と言っていた、この警官の同僚こそがフリーマンなのだとすると、一緒に飲んで「あの若いのの奥さんは美人で、この前妊娠してな。赤ちゃんができても大変だ、家は電車が通るたびガタガタいうから・・・」みたいに漏らしてしまったと考えられないか。 もちろん犯人を仕向けたわけではないが、嫉妬が絡んでつい旧知の記者(犯人)に情報を漏らしてしまい、そのせいでブラピの奥さんが首になって届いたとすると、ものの見事に「嫉妬」による制裁が果たされたことになる。 断罪が必ずしも死刑を伴っていないのは他の人も指摘している通りで、既に死んではいない者、死を選択できた者もいるし、現にブラピも死んでいない。つまり死んだから犯人が7人に含まれるという必要はまったくなく、またフリーマンには制裁が加えられないこと自体が不自然だ。 自分ではこの解釈の方が圧倒的になんていうか・・・素敵だと思う。もしこの通りなら生首が送られてきた時により心が痛みつけられたのはどちらだろう? 愛妻を首にされたブラピだろうか? 自分の失態がこれを招いたフリーマンだろうか? 僕ならむしろ後者になったほうがより辛い気もする。 そして、それでこそものすごい傑作になるのだけれど・・・しかし、誰もそうは解釈していないようで(笑)88点 ちょっと待った! 今「犬の死」に対するよい解釈はないかな、と思ってネット見てると、監督が用意していたラストは別にあって、フリーマンが「自分はもう歳だから」と犯人を撃ち殺すものらしい。これで完璧じゃないですか?僕の解釈。 フリーマンは自らを悔いて、自分が殺人を犯し、かつその失態がブラピに漏らされることだけは防いだ、と。 ただちょっと、それだとフリーマンのドラマになりすぎて、もう犯人や「7つの大罪による断罪」どうでもよくなる。だから変更されたのかな?とは思うけれど。 ん~! ショーシャンク以来の、定着した世評をひっくり返せた満足感!かな。(方向性違うけれど)
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