『オールド・ボーイ』はやはりレべチだった 2022/10/20 By Leave a Comment 2003年の韓国映画でカンヌのグランプリ受賞作。劇場公開時に観て、ほぼ20年ぶりの再見となった。 この度10本近くも韓国映画を観てきたわけだが、これはやはり頭一つ抜けている。いや、これほどおもしろい映画は他にほとんどあるまい。 主人公オ・デスはある日突然誘拐される。監禁生活は15年にも及び、これまた突然釈放。オ・デスは自分が監禁された理由を探しだそうと格闘するが、実は壮大な企みの上で踊らされているのだった。 『お嬢さん』と同じパク・チャヌク監督作品。 同時期に作られた『殺人の追憶』や『チェイサー』が実話を元にしているのに対し、これは日本の同名漫画を原作とする、つまり完全なフィクションだ。そのせいもあってか、前二者のアクションは荒々しいが、本作はもっと練りこまれてスタイリッシュ。 最も有名なシーンでもある、廊下でのワンショット・バトルがその代表で、これはまったくのキチガイ沙汰だろう。規模こそ大きく劣るが、インパクトは『アラビアのロレンス』のアカバ攻略に比肩するというと言いすぎか。 90年代半ばのウォン・カーワイや、岩井俊二世代の流れを引いたアクションなのだろう。 対して『殺人の・・・』などは泥臭く、この差は大きい。 どちらが良いという問題でもない。どちらも好きだ。 ただ、作品のリアリティとしてはどうか? 意外なようだが、私は、スタイリッシュな方が却ってリアルだと思う。 韓国映画のリアリティは、日本人の私にはどこかフワフワとしている。 鈍器を持っての殴り合いなのに長く続くのもひとつ。警察がいつもドジすぎるのもひとつ。家族愛が強い動機になるのもひとつだろう。 それらをリアルな筋立ての中に入れているのが、どうにも違和感なんじゃないかな。 いつも観終わったときに「それで?」と思ってしまう。 私はよく言うけど、リアリティとは”その約束事から逸脱しないこと”だと思う。人間が生身で空を飛んでも、五月雨のようなピストルの弾が当たらなくても、そういうテイストで統一されていれば問題ない。 「ファンタジーの方が、より人間心理の物語に没入できる」(みたいな)言葉は養老孟先生のものだ。 ドキュメントだってくしゃみはカットされるからリアル度100ではないが、まあ90としよう。SFファンタジーが30くらい、クライム・サスペンスが70くらいとしたら、それで(その作品を)括ってくれないと見ている方はなんとなくバカらしい。 その辺りを大事にするのが日本人の作り手や僕のような鑑賞者であり、韓国人はその辺が雑い(その分荒々しい迫力があるのだが)。 しかし本作は原作者が日本人のせいもあるのか、リアリティが50なら50で一貫している。たった50しかなくても、あるいはたったの10であっても、人間が劇にリアリティを感じるためには全く問題ないし、そこはひとつ、本作が他よりもこちらを満足させるゆえんだろう。 もうひとつはやはり、この監督ならではの練りに練りこんだ作りだ。 本作にしても、『お嬢さん』にしても、まったく隙なく作りこまれかつ、作家性・独自性が非常に高い。似た作風を挙げるなら『進撃の巨人』か。つまり、僕の大好物(笑) この監督が若年の頃に『めまい』を観てヒチコック作品にはまったというエピソードも大いに頷ける。 いやぁ、本当にこれほどの作品をよく撮ったなと。描写がえぐく、そうそう私もリピートしたくないのが本音だし、そういうの苦手な人に勧めにくいのが残念なところ。それでもやはり、本作には最高レベルの点を付けたい。94点
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