『国境』 娯楽作でも一級に入れるかの境界 2015/1/14 By Leave a Comment 今年もまた、ずらずらと読んだ本のことを話させてください。すみません。 先日紹介した黒川博行さん『疫病神』の続編にあたる『国境』を読み終えました。 相変わらずというか、ものすごい力作です。 今回は舞台を日本と北朝鮮に設け、ふたりの主人公二宮と桑原がボロボロになりながらも事件の真相に迫ります。 著作は多分2000年ごろ。今ほどには北朝鮮の情報が少ない時に、よくもまあこれだけの情報を集め、果敢にも連載という形で発表したと、まずはそこに驚く。だって、超ヤバいこと書きまくっているんですよ。政治の裏側も、生活の苦しさも、情報統制の激しさも。 だいぶ危ない思いもしたでしょうが、そこはパンクを地で行く作者。苦労話は友達うちにも話さないんだと解説で藤原伊織さんがおっしゃっています。 しかし、それだけに、北朝鮮の内情報道に少し偏りすぎて、中途で読者を飽きさせてしまう感が無きにしもあらずなところが惜しいかな。僕はまだ読めますけど、女性に勧めるには、ちょっと重くなってしまった。 それにしてもヤクザの桑原のキャラはかっこいいです。 精神的に、人に後れを取るということが決してない。無敵の男だね。 でも、現代小説だけに、能力的な限界はきちんと設けていて、『疫病神』では一度喧嘩に負ける(後からリベンジする)し、本作では出血しすぎて倒れている間に大きな利益を掠め取られてしまいます。このあたりが作者の一流たるゆえんでしょう。「無敵」にもきちんと限界を作れるかどうか。限界を作りながらもなんらかの無敵であることを読者に納得させられるかどうか。こういうのが『もぐら』とかのただの娯楽作との完全なる“国境”ですね。 いや、満足致しました。 80点
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