今さらですが、映画『Always 三丁目の夕日』を観ました。

動機は、前からいつか観なければと思っていたところ、先日観てひどかった『永遠のゼロ』と同じ監督と分かり、こりゃ、早い段階でこの山崎貢監督にケリを付けておかなければ、とまあそのようなことを思った次第。
『ゼロ』は、邦画としては立派な作りではあり、その職人的力量が、大作を任せるに十分であることを示したものとは思いますが、とりあえず、そのプラス点を完全に奪い去ってしまうような「嫌悪感」が非常に強い作品でした。
・ありがちな感動シーンを寄せ集めたことがありありとわかり、アホ扱いされたような不快感を持たされる。超売れセンポップスに接するときと同じ感じ。
・寄せ集めてつないでることから、小さな「?」が続出するストーリーに感情移入を阻まれる。
・これまた売れセンの「旧き良き日本人」を若夫婦の古風な会話などで強引に演出。キモい。
・最近はやりのアメリカ人的家族愛を賞賛するのも軽薄そのもの。
くらいかな。
『Always』も昭和30年代の感動ものと聞いていたので、嫌な予感ありありです。さて、その内容たるや・・・
端的にいうと、上記のうち、上二つはそのまま。逆に下二つには当たらず、いい意味で予想を裏切られました。
であれば、旧き良き、上品な日本人的なものは、『ゼロ』の百田の作為なのかな。
とにかく、そういういやらしさはなかったし、本作について巷間で言われるような「昭和の人情を美化しすぎ」という側面も嫌らしくは感じず。その辺は、三谷作品のようなものを目指したと容易にわかるようで、まあ、これまたパクリと言われればそうですが、でも目くじら立てることでもないような。
対して、上二つに関しては相変わらずの酷さです。
ストーリーもセリフも、とにかく予想を裏切るということがない。ありがちのオンパレードかつ、テレビの連続ものくらいで十分な「薄さ」。
簡単な例で言うと、貧乏な「鈴木オート」が周りの人よりも早く「三種の神器」を揃えてしまうところなど、作り手も十分わかっちゃいるのでしょうが、貧乏であるというストーリー上の大前提と、珍しいテレビに近所の人が集まるというシーンを描きたいことをどうしても両立させたいから「えいっ!」とやっちゃう。軽薄きわまりないな。
とにかく、この監督はこういう人なのでしょう。
人が喜ぶ、撮りたいシーンを撮る。それによって生じる大小の矛盾は、まあ大目に見てくださいと。
普通だったら、それに対して喜んでくれる人も相当数いるが、批評家たちがみな渋面になり、「世評の割に玄人評が悪い作品」となりそうだが、どういう始末か、これがまた各賞総ナメの結果となった。
・・・なんなんでしょね!? この風潮。
この後もグチグチと言いたいことはあり、実際に一度は書いたのだけれど、なんやら興ざめして消してしまった。
ん~と、え~っと・・・
もういいや。とにかくこの監督はもういいです。
SFXだけじゃなく、音響もすごくセンスありました。
やりたいことがすごくよくわかるし、それに虚飾なく進んでいけるところも本作で初めてわかって、好感です。
でも、なんつうか世界観が合わなさすぎる。
役者も全然輝いてませんでした。「あの」吉岡君でさえ冴えなかった。それで個人賞も総ナメって。。。
もう知らんわ!
猫又 says
少し前に地上波でもやっていましたが、
結局、いまだに観ずじまいです…
なんとなく食指が動かなくてσ(^_^;
感動しろー!と煽っているようなCMが気に入らなかったのかもしれません。
永遠の0もCMが何となく嫌でしたし…
本文とは関係ないのですが、
守り人シリーズの上橋菜穂子さんが
国際アンデルセン賞を受賞されましたね♪
また読み返しなりました(^^)
タクミ says
>感動しろー!と煽っているようなCMが気に入らなかったのかもしれません。
ところが案外そうでもないのですよ。
前半はコミカル。いや、4分の3まではそうかな。
多分、売りに行く方がそっちにぐぐっと引っ張ったのですよ。CMとポスターで。
でも大しておもしろくないんだよね。
何に喜んでいいのかわからないような映画でした。
『ゼロ』みたいないやらしさはない反面、いいところが特にない。
そういう意味では『ゼロ』の方が完成度は高かった。
場面場面では結構決まってましたからね。
>守り人シリーズの上橋菜穂子さんが
国際アンデルセン賞を受賞されましたね♪
児童文学のノーベル賞みたいなんでしょ?
当然と言えば当然だけれど、すごい。
猫又 says
可もなく不可もなく…のような映画ですか…
積極的に観ることはないですかね…
少し前、友人に「闇の守り人」を薦めました。
かなり気に入っていたようです♪
今回の受賞にも
「やっぱりな。(受賞する)価値がある本だよ。」
と言っていました。
何故かちょっと自慢気な口調だったのが
微笑ましく感じられました(^^)
タクミ says
>可もなく不可もなく…のような映画ですか…
正直、本当に「つまんない」映画です。
おもしろくもなければ感動もない。
ゼロのように不愉快ではなくて雰囲気はさらっと清潔なんですけど・・・
ゼロの方が、まだ不快にさせるだけのパワーがあったという感じです。
どちらかを薦めるとしたらゼロですね。
くま says
あくまでも私の仮説ですが、クリエイターもコピペが簡単に出来る事で、モノ作りが雑というか、ゲーム感覚になっているのではないでしょうか?
そこに哲学は無く、表面だけ辻褄があっていればいい、みたいなーw
良い悪いではなく、世の中の風潮かもしれないなーと思いました。
タクミ says
いやまあ、精力的にまじめにやってるとは思うんですけどねぇ。
一言でいうと、「けれんみのない人間」ということなんでしょう。
当たり前のものでドヤ顔できる。
百田さんもクリエイターの中ではケレン薄め、山崎さんに至っては薄々ということなんだな。
湊かなえみたいにケレンの塊みたいな人もいて、僕はそっちを好むけれど、でもまあこれは好き好きですよね。
あっ、その点に関してはね。
パクリまくりとか良くないものは良くないと思うけれど。
くま says
パクリの良し悪しって、レベルで評価されてしまうものかもしれませんね~
ディズニーのアニメなんてあらゆる名作のパクリの集大成だなぁと「アナと雪の女王」を観て、改めて思いました。
テーマソングがちょっと、フラッシュダンスに似てましたが、感動するし~
どんな物にも、守破離ってあると思うのですが、パクリを超えて洗練されて行くというか。
なので、山崎作品はこれからなのかもしれません。大人の事情もありますが~
タクミ says
>パクリの良し悪しって、レベルで評価されてしまうものかもしれませんね~
そういう部分はもちろんあります。
でもね、ヒチコックが大好きで、「パクリまくる」と宣言していたデ・パルマの作品には充分なオリジナリティがあるわけで・・・
CMなんかもパクリの総パレードなのですが、実際には「これはパクリすぎだろう」と感じるものは多くない。
この辺にちゃんと根拠はあるはずです。
パクリを人が不快に思うかどうかの分岐点の。