さて、今回はソナタ形式ね。
ポリフォニーからモノフォニーに進化した西洋音楽は、その帰結点として「ソナタ」なるものを生みだす。では、そのソナタっていったいなんなのか?
(図表はひと様のものをいただきました。ごめんなさい)
これ、要するに楽曲(1楽章)の構成の話なんです。
よく、起承転結の構成みたいなのを教えられたよね。ああいう感じになったひとつのパターンというわけ。
基本形は、第一主題(主役になるメロディ)が出てちょこちょこ変奏した後、第二主題が新たに登場してまたちょこちょこ。これが最初の塊になる(提示部)。そのあと2個目の塊で音楽が発展していろいろアレンジされ、またいったん終了し(展開部)、最後にひとつめの塊が復活する(再現部)。つまりA→B→Aの構成。これをソナタ形式と呼ぶのです。実際には、これによく、序奏やコーダ(最後の盛り上げ)が付いたり、最初のAが繰り返されたりするので、序奏→A→A→B→A’→コーダ などとなり、かなり複雑なんだけどね。
ここでポイントになることが、提示部の時は、第一主題と第二主題が別の調性(ハ長調とト長調とか)でちょっとした不安感が漂うのに対し、再現部では同じ調整(ハ長調)に揃えられたり、それ以外にも微妙にアレンジされていて、ここである種の到達感や幸福感のようなものに包まれること。
そして、このソナタ形式を最初と最後の楽章などに持ってくる曲(全3楽章や4楽章)自体をも「ソナタ(曲)」と呼ぶのがややこしいところだ。つまり、ソナタ曲とは、第1楽章(など)がソナタである曲、というわけ。ややこしいっしょ? しかし、このソナタ(曲)。全く侮れないくらいにクラシック曲の多くを網羅している。
まず「交響曲」がそう。それから「協奏曲」。これら2つでオケものの大半を占める。「室内楽曲」(複数だけれど少数の楽器によるもの)はほとんど○重奏曲(弦楽四重奏曲など)と呼ばれるが、これもソナタ曲。楽器1台による「器楽曲」の分野はまだマシで、ソナタはその一ジャンルにすぎないって感じだけれど、ほかには「オペラ」や「声楽曲」が残るだけだから、クラシック曲の約半分がソナタ曲というイメージになる。いや、こうやって書いてても改めてすごいなと思うよ。
ソナタ曲の構成自体にもだいたいのパターンがある。第一楽章はロマン派以降ではかなり思い切った、まさにその作品を世に問うたゆえんたる頑張りを見せるが、それ以降は、第2楽章にゆったりの和み系、(交響曲など4楽章構成のものなら3番目に早くはないが元気な部分を挟み)最終楽章は運動会的に爆発する、という組み合わせがお決まりで、実際、たいしてオリジナリティのない曲も多い。
そして、ソナタ曲は、魂を注いだメイン部である第一楽章で困難からの調和~到達を表し、全楽章を通じても困難からの最終的成功~調和を表しているわけだけれど、これって西洋芸術の王道そのものじゃないかな。
キリスト教徒の頭の中をず~っと占めているのはキリストの受難から復活の物語や、民族受難から最後の審判による救済の物語。天空から光が降ってくるイメージのあの場面に到達することこそが、19世紀までの芸術のワンパターン・モチーフだったと思うのだ。
ポリフォニー(対位法)とホモフォニーの技法を用いて変奏を繰り返し、困難から到達の場面に至るソナタ形式・ソナタ曲は、それ自体もまた西洋音楽のひとつの到達点と言うべきものだ・・・というわけ。どう?やっぱ難しいかな。
でもまあ、ソナタ形式を理解してもらうには、とにもかくにも聴いてもらうのが一番。
テキストとしてはモーツァルトのピアノソナタくらいがベストだろう。中でも、有名どころのソナタ第15番・第1楽章は、序章もなくさっと始まり、わずかにコーダらしいものがあるだけでシンプルに終わるので最適の曲と思う。
CDはこれが良いのではないか。
●モーツァルト ピアノ・ソナタ選集 バレンボイム (EMI 2008年発売 1,051円で購入可)

今回もあまり聴きこんだものではないので残念ながら「推薦」とまでは言えない。でも、もう少し評価が高いピリスや内田光子のものと比べても、この演奏は楽しく聴ける気がするのだ。そして、選曲がむちゃくちゃいい。CD1枚に収めるとして、これ以上のものはない4曲が入っていると言えるだろう。僕が好きなのは第8番と第15番、どちらも第1楽章がいい。
あれっ?今見たら定価の1,500円に戻っちゃったね。なんかのキャンペーンだったのかな。。。
金額的にはピリスや内田の全集も驚くほど安く買えるのでやはりお勧めできる。でも、これからクラシックに親しむ人にはそういう大部なものを買って1番から聴いちゃう、とかはぜひとも避けてほしい。それをやるともうダメ。一気に熱が冷めるリスクが非常に高いです。
moon says
たくみ先生、皆様はじめまして。
寒くなりましたね。
ブログ拝見して、
音楽に日頃ふれていない自分でも
面白い例え話で
興味がわいてきました。
ご紹介にあったCD
買って聴いてみることにしました。
noichigo says
タクミさん スミマセン
noichigoには難しいですし聴いてるだけなので詳しくないけれどワタシもモーツァルト ピアノソナタ第8番 第1楽章…好きです♪ 持ってるCDはピリスでした☆
mica says
>ソナタってどなた?
ウケる(笑)
ソナタ形式、小学生の時習いました(^^)
ソナタ形式を理解する為には
ソナチネを聴いたほうが分かりやすいかもしれませんね
タクミ says
moonちゃんいらっしゃい。
お名前さっぱりしてていいですね。
>ご紹介にあったCD
買って聴いてみることにしました。
ここに載っている値段はHMVのオンラインで買った時のものです。
そして、そこは、数枚まとめて買うと安くなったり、金額が一定額を超えると送料が無くなったりします。
これから連続でもう2回くらいクラシックネタが続きますから、それを待ってからご購入いただいたり、また、バックナンバーのカテゴリー「クラシックへの誘い」を参考にされて、数枚まとめてお買い上げいただく事を、お勧めします。(結構庶民派なので)
これからもブログよろしくね。
タクミ says
>noichigoには難しいですし聴いてるだけなので詳しくないけれど
難しい話はここまでですよ。
「クラシックへの誘い」全回で、多分この2回だけです。
また、これが僕にも重くて、今回のシリーズは遅くなってしまった(笑)
でもね、僕としては、クラシック音楽の魅力は、「オーケストラ(あるいはピアノやヴァイオリンの単楽器)の音自体」と「変奏と対位法による展開」にあると思うのと、ソナタなるものが何か、というのは誰でも気になること(になる)なずなので、これらだけはしっかりとやっつけておきたかったのです。
(続く)
タクミ says
ではこれらのことを知っておくのは、クラシック音楽を楽しむうえで必須のことなのか?というとそうでもない。
しかし、一方ではそのことがクラシック好きになれるかのキーになっているとも言える。
どういうことか?
僕は、クラシックを好んでいる人は、「無意識に、それらを楽しめている」と思うんです。
クラシック好きは、一旦聴かされたメロディーが変奏・展開していく様を、他のメロディーと対位的に絡んでも盛り上がっていくことを、理論は知らずとも耳で追っている。だからクラシックを好んでいると。
そういう意味では、この2回の記事は不要であったとも言える。
でも、やはり、これからクラシックに親しむような人に、「ここがポイントになりますよ」という話はしておきたかった。
「この競技を楽しむためのポイントはここになります」みたいなことを言っておくことはやはりメリットがあるでしょう?
だから、今クラシックを楽しめている方なら、今回の話はどうでもいいと思いますよ。第一、僕自身が20数年来もクラシックを好んできて、つい先日知った様なこともいっぱい含まれているのですから(笑)
タクミ says
ソナチネか。
なるほどね。
音楽鑑賞していてぶつかることがほとんどないから思いつかなかったよ。
noichigo says
タクミさん 優しいな、
バックナンバー 少しずつ読ませて頂きますね。
ありがとう。
冷えますので温かくしてお帰り下さいね。
気をつけて☆彡
休憩中 食堂ニテ
moon says
たくみ先生、
購入方法も教えていただき
ありがとうございます。
これからのブログの続きと
バックナンバーを楽しみつつ
まとめてお得に入手いたします♪
moon says
たくみ先生、
購入方法も教えていただき
ありがとうございます。
これからのブログの続きと
バックナンバーを楽しみつつ
まとめてお得に入手いたします♪
なお says
タクミ先生、こんばんは。
先月、写真を撮って頂いた大型ガッチリのなおです。
いよいよ今月から活動スタート!
撮影して頂いた写真は、親友が開口イチバン「エロいっ!」と絶賛(?)し、母はとても気に入って携帯の待受に…と、とても好評です。
が、しかし。ただいま現実の世知辛さを実感中…(;^_^A
やっぱり童顔メイク習おうかなぁ。
脱線してスミマセン。
クラシックの理論。なかなか難解ですね。
そもそも大体において感覚で生きている私には、文字で読むと余計に…(。ω。;)
例えば、もう少しすると、ベートーベンの第九のシーズンですよね。もしかして、これもソナタ…って事ですか?
猫又 says
ソナタ形式、と用語として聞いたのは久しぶりです。
音楽の先生が、分かりやすいからとピアノで弾きながら説明してくれたのを思い出しました。
モーツァルトのピアノソナタは、楽譜の見た目もきれいに感じます。
指で辿ってるだけでも楽しめます(^^)
ぼの says
こちらはピアノの経験があるので、すんなり入りました。
それから、ラックに迷って時間がかかりましたが、オーディオ一式買いました。アドバイスありがとうございました。
なので、オペラ特集もよろしくお願いします(^-^)/
めみ says
転校や、高校での音楽の選択科目は、履修してないので、記憶が飛んでいるやら、アタマから抜け落ちているのか、かなり基本もわかってない状態です💦
そんな折、�鷆冬ソナ”ってどうなんだろうと思っていたら、あらすじが、ソナタ形式で解説されていて、面白かったです(笑)↓
ja.uncyclopedia.info/wiki/%E5%86%AC%E3%81%AE%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%
タクミ says
ちょっと忙しくて、ブログの返事をする時間もない感じでした。
noichigoちゃんありがと。
最近寒いね。僕は早くも自転車通勤をさぼりがち。
moonちゃんもありがと。
HMVは前のように上手にリンクが貼れないんでちょっと買いにくいと思うけれど頑張って探してね。
タクミ says
なおちゃんいらっしゃい。
あのがっちり美の子ね(笑)
>撮影して頂いた写真は、親友が開口イチバン「エロいっ!」と絶賛(?)し
でっしょ?
婚活の写真は絶対にエロくなきゃ。
>やっぱり童顔メイク習おうかなぁ。
おいで~っ!
>例えば、もう少しすると、ベートーベンの第九のシーズンですよね。もしかして、これもソナタ…って事ですか?
そうですよ。
第一楽章はソナタ。だからソナタ曲。
タクミ says
>モーツァルトのピアノソナタは、楽譜の見た目もきれいに感じます。
指で辿ってるだけでも楽しめます(^^)
そうなんだ。
僕は楽譜見ないし、うらやましい。
タクミ says
>それから、ラックに迷って時間がかかりましたが、オーディオ一式買いました。
マジ??
どうなったの?
あっ!
第九返さなきゃね!
タクミ says
めみちゃん、文字化け&ご紹介のページにも飛べずです(笑)
めみ says
すいませんm(__)m
‘冬のソナタ – アンサイクロペディア’
でヒットするので、気が向いたら見てみてくださいね!
ぼの says
切りっぱなしのスピーカーケーブルが届いたときにはしばしひるみましたが(笑)、鳴るところまでこぎつけました。慣れ親しんでいるはずの曲の隠れていた音を見つけたり、と音的には満足していますが、なにしろ、まだ数時間しか鳴らしていないので、また多少は変化するものかしらね?
第九は…、今月末、眉トリに伺う予定ですので、その時にでも。まあ~第九は複数枚持ってますが…(^-^)/
タクミ says
冬ソナかい(笑)
タクミ says
スピーカーケーブルの端っこはそのままつないだの?
でもまあ、それはそれで音はいいらしいが。
数時間は全然だめよ。
30時間くらいまでは急変。
あとはじわじわよくなります。
ぼの says
端っこは、中学校の理科を思い出しながらつなぎました。なので、銅線をそのまま差し込んだかたちですね。ちょっとマニアに近づけた気分で面白かったです。
では、激変を楽しみつつ、とりあえずこのまま30時間鳴らしていきます(^-^)/
めみ says
‘絵画と写真’と同じように、‘音楽とドラマ(劇)’の構成には、古典的なものからの相互影響があるんだろうな、と思ったのです。
タクミ says
ケーブルのつなぎ方はまず問題ないでしょう。
ただ、錆びたり緩まないようにしないと。
タクミ says
どういう理由で『ソナタ』と言ってるのか?
ちょっとわからんなぁ
めみ says
えっ?アンサイクロペディア、読んでないでしょう?って読まないかぁ(笑)
多少こじつけの、あらすじ解説かもしれないかもしれないけれど、確かになぁとも思え、そうすると、ソナタ形式の構成で、名作と言われるものが、書かれていたり、或いは、逆に、名作の構成からヒントを得て、それが、音楽の構成に影響を与えている?ように思えたのです。芸術って、そういうものなんだろうなぁと。
タクミ says
>えっ?アンサイクロペディア、読んでないでしょう?
いや、冬ソナ絡みと知った段階で・・・
だって見たことないんだもん。
猫又 says
先月発注していたCDがやっと届きました!
「取り寄せに時間がかかります」という旨のメールがありましたが、こちらもほとんど忘れていました。
音の溜めが嫌らしくないのがいいですね。
スタッカートやアクセントにも柔らかさを感じました。
中間の辺りの音が、旋律を下から支えるような響きにうっとりしてしまいます。
第15番は私も大好きな曲です♪特に第2楽章が好きで…
右手と左手の音の絡み合い方が、堪らなく好きです。
残念なのが、今週は頻繁に起こる耳鳴りに邪魔をされてしまうことです。
早く治さなくては(T_T)
タクミ says
>音の溜めが嫌らしくないのがいいですね。
なるほどね。
なんかウェルバランスなんですよね、この演奏。
スルメ系というか、普通なようで飽きない感じ。
耳鳴り?
それはかわいそ。
僕は耳が不調だったらくたばります。
遺書でも書きそうw
猫又 says
CDの整理をすると、飽きのこないタイプのものが手元に残っていきますね。
遺書まで…w
耳鳴りはかなり鬱陶しいものですね。
遺伝らしく、家族全員耳が弱いです(>_<) 比較的慣れていますが、集中力は削がれます。
タクミ says
僕も気圧変化の影響には弱いです。みみ。
変な話、最近では鉄棒の懸垂をするだけで耳が詰まる。
いや、と言っても懸垂で高さが変わるからではないよw
内側から空気を押し出すような感じになって耳が詰まるんですけど、これが結構不快。
飛行機の時のやつを弱くした感じで、本当にやわになったなと思う。
猫又 says
力む時の「ふんっ」で耳に圧がかかるのでしょうか…
試しに懸垂をして確かめようとしたのですが、
ただぶら下がっているしかできませんでした(*_*;
一回くらいはできるかと思ったのに…
タクミ says
う~む、確かに懸垂ちょっと難しそうね。。。(笑)
noichigo says
タクミさん おはようございます。バレンボイムのCD聴きました♪大好きな8番第1楽章はピリスが儚く切ない繊細な印象(?)とするとこちらは重厚でウットリする感じでした(*u_u)聴いている自分が美しくなったような錯覚に陥る(笑)一枚かなと思います。
猫又さんの15番2楽章がしっくりくるような穏やかな晴れた朝…ベランダの洗濯物も喜んでいるようです(ヘンなことを言ってスミマセン…)ありがとう。