時をかける少女 2022/11/29 By Leave a Comment 細田守作品は、『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』に続いて3作目。実は本作がそれらに先立つ出世作であるようだが、僕には他2本に比べはっきりとひとつ落ちると感じた。因みに今日古典とも呼ぶべき原田知世版は観ていない。 恋愛もの色がかなり強く、それを僕が好まないというのはあるだろう。『サマーウォーズ』の恋愛描写はほどよかった。いうならば”ちょびっと”(笑)。 爽やかに香るくらいがいい。 次に、さして美人でもないと思われる主人公と、違うタイプのイケメン2人の3人組がいつもつるんでいる、という設定自体に相当な無理がある。これは筒井康隆の原作に文句を付けるべきかもしれんが。 そして、この何とも言えないインテリ臭さ、もしくは芸術愛の展示。これが青臭い(レベルにとどまっている)こと。 この細田という人は、ジブリと奇妙な縁、宿怨と書いてもいいくらいの宿縁があるようだ。 『おもいでぽろぽろ』の研修生に募集して落ちるも、宮崎駿から「君のような人間を入れるとかえって才能を削ぐと考えて、入れるのをやめた」と記された手紙をもらう。 その10年後くらいか、『ハウルの動く城』の監督に選ばれて制作に入るも、結局途中で中止。原因として鈴木敏夫が「宮崎駿の存在がプレッシャーになった可能性」を挙げているから、恐らく宮崎が口を出しすぎたのだろう。もちろん結果は宮崎監督作品に落ち着いた。 なぜここでジブリの話をしたかというと、ジブリ宮崎作品にもやはりインテリ臭・芸術愛の青臭さがあるのだが、その”包み方”が宮崎のほうが格段に上だから。 トトロのお父さんが考古学の研究を家でしていたり、魔女宅の両親がお化け屋敷に住んでみたかったと言うとか、ちょちょっと匂わせてくる。 それに比べて本作では、野球好きのバンカラ少年がこの絵に会いたくて時をかけてきた、みたいなことを言うのだから、これでは直球すぎるだろう。3人組の設定も含めて、(原作通りなのかもしれないがそれでも)このように青臭さを濃厚に発してしまっては、作品としての成熟度は浅く感じざるをえない。 とはいえ、これはフリーになって初めて、彼の出世作に当たる作品である。 その3年後の『サマーウォーズ』は、同じような青春ファンタジー路線ながら、いろんな角が取れて格段にレベルアップしているし、さらに3年後の『おおかみこども』では作風をだいぶ変えてきている。変貌を続ける俊才であることは間違いないのだ。 実際、”アニメ映画ランキング”などのワードで検索すると、宮崎作品と細田作品ががっぷりよつ、『千と千尋』『トトロ』『魔女』などとここで挙げた細田作品が交互に並び、そこに『君の名は』が入ってくる(笑)という構図と言ってよい。興行的にも非常に強い人なのだ。 しかし、それでもだ。 やっぱ宮崎駿には遠く及ばないかなぁ~と、僕は思う。 ジブリの代表作、ナウシカや魔女宅を観ている時の、心洗われるようなあの感覚は独特だし、本当に何度でも観れてしまう。まあ、久石譲を抱えているというのが最大の差かもしれないけれどね(笑) あっと本作。う~ん・・・『サマー』や『おおかみ』からだいぶ落ちて、73点かな。
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