「倍返し」で流行語大賞にもなったドラマ『半沢直樹』の原作である『オレたちバブル入行組』、その続編の『オレたち花のバブル組』を読んだのが10月のことだったか。
正直まずまずといったところの作品。
よくTVドラマはまた良さがあるものの、深みは原作に及ばないということがあるが、これはTVでは観ていないまでも原作自体に深みが全然なく、まあTVドラマの原作としてぴったりの「身の丈」かなと思った。
一気読みではあるんですよ。
筋立て自体はかなりおもしろい。
でも、書いたのがちょっと前のこともあり、銀行や査察の内情暴露にあまり新味がない。
そして、それ以上にこの人の最大の特徴とも言えるのが、時代錯誤的なまでの勧善懲悪的キャラの振り分け。人物を描く気が最初からないのか、本当にこれくらいの人物造詣でいっぱいなのか、ようわからん。
そのあたりが大きく原点になり70点台の前半という評価でした。
文庫本解説にもその辺はにじんでいて、本作を作者の代表作とは全く扱わず、そのうえで「同路線であれば、『入行組』の後で書いた『空飛ぶタイヤ』のほうが断然スケールアップしていておもしろいのでそちらもお勧めですよ」というようなことを言っていた。
ふ~ん、一応覚えておくか、と気に留めておいたが、先日その『空飛ぶ』を読んでみて、これにはもう大満足!
『オレたち』にプラス10点は付けられる。ものすっごくおもしろい。
筋立てのおもしろさは比較になりません。それから組織の内情にもより深く切り込んで(想像も多いだろうけれど)いる。勧善懲悪と、超浅薄なメロドラマが随所に顏を覗かせてしまうところは相変わらずだが、最大の弱点たる人物造詣もひとまわりはマシにはなっています。
『半沢』から『オレたち』を読んだ人は多いだろうし、ある程度以上の読み手ならそれほど満足しなかっただろうけれど、そういう人も池井戸を見切らずに『空飛ぶ』まで進んでみてほしい。
そして、これから『オレたち』読もうかな、と思ってる人は、よく読書する人ならぜひすっ飛ばして『空飛ぶ』へ、がお勧め。でも、あまり読まない人には『オレたち』の方がやっぱりいいかな。
同時進行で、運送屋、自動車メーカー、銀行、PTA保護者会の4つのドラマが進む設定はちょっと複雑すぎるかもしれないので。
この池井戸潤という人は、読んでいてもわかるけれど三菱銀行の出身なんですね。
そういう立ち位置でありながら、『オレたち』では東京三菱UFJをターゲットに、『空飛ぶ』では三菱自動車をメインターゲットにして、大組織を基本「悪」として辛辣に批判していったのは、なんともはや、かなりパンクな人だと思う。
度胸あるなぁと思う反面、サラリーマン時代はよほど不遇だったのかしら、とも勘ぐっちゃいますね。
組織って、彼が言うほど悪いものでもないと僕は信じているし。
それから、『オレたち』の主人公半沢にあたる人物が、『空飛ぶ』だと沢田という名前で出てくるが、彼は半沢ほどには尖ってもいない、筋を通し切りもしない中途半端な人物で、まさに「半」半沢という感じで描かれている。
名前が逆で、『オレたち』が沢田、『空飛ぶ』の方が半沢、であればなおのことシャレが効いていたのに、とどうでもいいことも考えてしまいました。








