先日『ルートヴィヒ』という映画を観に行った。
ドイツに行った時からずっとこの人物が気になっていたのだが、その伝記映画だという。
それは見に行かねば、となった。
公開されてから間もないのに、全国2劇場でしか放映されていない。
かなりしょぼい作品なのか?という恐れもあったが、それはいい意味で裏切られた。ワーナー配給のしっかりした作りである。
内容は、なるほど確かに伝記映画であり、どうというほどの真新しさもなかったが、それでも、今までこの人物とその周辺に対して持っていたイメージを映像化された形で再確認できたことの意味は大きく、十分に満足できる観劇となった。
そも、ルートヴィヒ2世とはいかなる人物か。
ゲルマン人の建国したフランク王国が10世紀に分裂した後、フランスがほぼ統一王朝の形で推移したのに対し、ドイツ・神聖ローマ帝国は20世紀初まで小国に分かれたままとなった。そのうちの一王国(正確には神聖ローマ帝国後)バイエルンの国王がこのルートヴィッヒ2世である。
在位は19世紀半ば。ビスマルクやナポレオン3世と親交があった。そういう時代の人。
従妹にかの有名なエリザベート(シシィ)がいるだけあって、かなりの美形。そして超個性派であった。
もともとオタク的素養があったのだろうが、男色傾向もあって結婚に失敗したのち、戦争にも敗れ、完全に夢の世界の住人と成り果てる。
心酔するワーグナー(ものすごい浪費家で有名)を探し出して援助したほか、豪壮な別荘城郭建築に国家と私の財を惜しげもなく注ぎ込んだ。
その頂点たるノイシュヴァンシュタイン城は、ドイツ城郭の最高峰。外観はディズニーランドの城のイメージとなったくらいで、まさに夢のような美しさであり、内装は各室がワーグナーのオペラ世界を贅沢に表現している。
当然その時代の人からは「狂王」と呼ばれて憎まれ、廃位された直後に変死を遂げたのだが、そこで今日の本題である。
現代ではドイツ史上でも最も有名な王様である上に、同地に莫大な観光収入を生み続けている。ドイツ観光のハイライトとしてノイシュヴァンシュタイン城を置く人が多いのだから、その周辺も含めてだと落ちるお金はすさまじい額だろう。そして、それが今後もずっと続いていく。
これはいったい「悪王」なのか?
もちろん同時代人にとってはそうであろうが、バイエルン地方の歴史上として見れば、利が害を上回っているのは間違いなくも思える。であれば、人間の評価としてはどうなるべきか。
僕は、人間これでいいのじゃないかと思う気持ちの方が強い。
同時代人にとっての評価こそを優先すべきだという理由も特にはないだろう。
目の前の人間を苦しめても、将来にわたって多くの人に利益を与えれば、相殺され、上回るものなのではないか。人の評価とはそういうものではないか。
夢の世界に生きて、好きなことを無理くりに行い、同世代人にとっては「狂王」でも、同地に今は利益を生み続けている男。
これも壮大なロマンであろう。
映画を観る前も、そして観た後も、僕にはそのように思える。









