フェリーニの『道』 2023/2/13 By Leave a Comment 名匠フェデリコ・フェリーニの代表作。僕も大好きな映画で3~4回目の鑑賞だが、さすがに少し古いのかな、とも感じた。 『ティファニーで朝食を』なども同様で、この時代の映画は、いいテーマ音楽だとこれでもかというくらいその曲を使ってくるが、これがしんどい。ニーノ・ロータ作曲のテーマ曲は紛れもない名曲だが、何回も観た映画でこれを10度も繰り返されると、さすがに辟易してきた。 しかし、良い映画であることは間違いない。 なにより、雰囲気やテーマといった、映画の”根本”が上質なのだろう。人間の弱さ、寂しさ、だらしなさ、そして優しさなどを素直に並べ、押しつけがましい評価は与えない。僕好みの作風で、それこそ寅さんの山田洋二とも似ているが、実際に山田監督は本作の影響を受けたと語っているらしい。 さすがに山田作品とは大きく異なる部分もあって、それは宗教の国であるところ。 「人間だけでない、この世にあるものは砂の一粒だって価値がある。それを神様は見ている」という思想が代表か。「砂も地球のかけらなんだと~♪」ってやつですよ、アン・ルイスの。 実際、日本人の中高年がその言葉を語るとき、多分その出所自体がこの映画なのじゃないかな。 これなんか、どうしてもキリスト教らしい押しつけなんだが、しかし、その押しつけさえ最小限に抑えてしまっているところが秀作たるゆえんだろう。頭が弱く、乱暴な男に激安で売られて、彼の大道芸アシスタントと慰安婦をやらされている女が、「それでも私は彼に求められて生きているのだ」と思って感謝する瞬間。感動的である。 それゆえに、その後の悲劇が切なくてしかたないのだが、それも最後のザンバノの涙で救われる。今回はフェリーニ夫人であるマシーナ以上に、ザンバノ役アンソニー・クインの名演が印象に残った。80点(多分初回なら90点はいく映画)
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