元横綱大鵬の納谷幸喜さんが亡くなった。

といっても、僕が大鵬の現役時代を知っているわけではない。
僕が相撲を観だしたのは小学校3年生の時。
兄が友達と遊びで相撲をしだしたのをきっかけにテレビで観るようになったのだが、後から思えば、それが丁度「大鵬後」というべき時点であった。
それ以来、偉大な横綱を数多く見てきた。
北の湖、千代の富士、貴乃花、朝青龍、そして白鳳。しかし、その誰もがいまだ破っていないのが、大鵬の持つ幕内32度の優勝だ。
もちろん、現役時代を見ていないわけだから、彼自身への「直接の」感慨は薄いかもしれない。
でも、ひとつの時代を象徴する存在を失ったという思いはとっても強い。
有名な『巨人。大鵬。卵焼き』という言葉を知ったのはいつだったか。
巨人の人気は圧倒的で、TV放送があるときは、あの「太陽にほえろ」ですら飛ばされた。とにかく、高校野球も含めて、野球人気は圧倒的だったのだ。
漫画では「少年ジャンプ」が全盛時を迎えていく。
ほかに、ハウスのバーモントカレー、キリン・ラガービールなんかも不動の人気を誇った。
彼らは決して“沈まぬ太陽”であるように僕らには思えたが、でも実際にはそうではなかった。
相撲人気は凋落、野球もスポーツ№1の地位は保ちつつも、その相対的人気を大きく落とした。
ジャンプはマガジンに敗れた後、トップを取り返したが部数を減らす。ラガーはスーバードライの半分も売れない。バーモントカレーに至っては過去の遺物に近いだろう。
その時代には選択肢が少なかったのだ。
娯楽も少なかった。
いや、もっと言えば日本の国自体が豊かでなかった。
数少ない娯楽に興じ、皆が同じアイドルに心を寄せ、それで満足できた。
そんな時代の象徴だった人物が亡くなったということ。そういうことなのだと思う。
今は価値多様化の時代。
多くの作業がインターネットに代用されるようになった、このなんとないふわふわ感。
頑張ればこれくらいは報われるはずだと思える確かさもない。
職場での地位も安定しなければ、せっせとためたお金も、カードの悪用に合うくらいで吹っ飛んじゃいそうだ。
そんな時代に、努力の末最高の栄誉を得た人物が亡くなったとういうこと。だからこれほどに皆の心を打つのだと思う。






