Takumi Blog

タクミな話

心臓に毛の生えた男

imagesCA7T7AXYワールドカップで日本代表が敗退しましたね。
でもまあ、この大会での日本チームを論評する・・・などということは、あまりに巷で行われているので、僕の趣味に合わない。
ただ、この大会の日本代表選手で、最も刺激的だった、この男についてだけ取り上げさせていただきます。
岡田監督自身が語っておられるように、今回の布陣は、まさに賭けという部分があった。
それを「吉」と一瞬で変えてしまったのは、カメルーン戦での本田選手のゴールであったに違いないと僕は思います。
あのゴールシーン。僕は思わず「お~っ!」と叫んでしまいました。
それは、それほど難しいシュートではなかったかもしれない。
足元にジャストで来たパスを、間髪を入れずに、しかもコースを選んで押し込んだもので、しごく簡単ということは決してないが、しかし、やはりあまりにドンピシャのパスであったことも確かです。
しかし、それでも僕は大きな声を上げてしまった。
それは、こういう大事な試合で、今までずうっと日本選手がなし得てこなかった「当たり前のプレー」だったから。
そういうシーンを見たことがなかったから。
今までにも何人か、天性のストライカーであるだとか、海外でもまれ、精神的に強くなって帰ってきたとか言われてきた選手はいたが、結局のところ、大事なシーンでは、その当たり前のことができなかった。少なくとも僕は見たことがなかった。
でも、本田というこの金髪の日本人は、いとも簡単にそれをやってのけてしまった。
それを見た瞬間、僕は「この男はほかの日本選手とは何かが決定的に違う」と感じました。その何かは、他のサッカー選手とは違うというどころか、多分日本人本来の習性とは違うとすら言えるものではないか。
その後のデンマークとの試合でも、すばらしいフリーキックや、アシストを見せてもらったが、前者への予備知識はあったり、後者は少し精神的に余裕のある場面であったりしたので、それらはカメルーン戦のシュートほどの驚きをもたらしはしませんでした。
しかし、昨日の延長戦後のPK戦で、僕はまたこの選手の特異性、僕が彼に対して持っている関心の核心にあたる部分を見せられることになります。
場面はPK4人目のキッカー。日本はひとり外していたため、本田自らが外せば、日本の今大会の敗退が決まるという場面。
それは確かに、百戦錬磨の代表選手ならば、かなりの確率でシュートを決められる場面ではあったけれど、それにしてもこの男は、もうまるで練習の一本であるにすぎないように、キーパーの動きを見極めたのちに、スコンと流し込んでしまった。
「やりやがった!」と僕は思いました。
多分、なんらか声も上げたと思うが、それよりも、そういう心中の唸りの方をよく記憶している。
よくわからない。
ああいう、脱力系のシュートを打つ必要があったのか。それが最も成功率が高かったから選んだだけのものなのか。あるいは、本当にただ練習通りにヨイショといったものなのか。
いずれにしても、僕の中では、今大会の日本選手のプレーで、最も心に残る2つの場面のひとつとなってしまいました。
そのボールや体の動きの緩慢さ、シュート後の喜びのなさ、そして、それらから生まれるふてぶてしい印象・・・
それらのもたらした違和感が、僕のような、普段は特にサッカーに興味を持たぬ一日本人に対してのみもたらされたのならば、それは彼のためにはほとんど何のプラスにもならないものだが、しかし実際には、彼はこの瞬間、とてつもなく大きなものを勝ち得てしまったのではないかと思う。
それは、この時点までで、ある程度の技術的評価を下していたであろう、ヨーロッパサッカークラブの関係者が、あのPKの瞬間、「この若者は日本人特有のメンタル面での弱点を持たない」と確信したはずだからであり、それが、本田選手にとってのものすごい躍進のチャンスとなりえるからです。
好き嫌いの話をすれば、僕は正直な話、まだこの不遜な若者を心底好きにはなれないでいます。
ただ、今大会で、この男が、僕にとって最も刺激的な日本人であったこと、それは間違いない。
そして、この特異な心臓を持つ若者は、これからどんどん勇躍して、まだまだ僕の脳みそを揺さぶってくれそうです。

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