宮木あや子著『花宵道中』を読んだ。
本屋で平になっていたのが気になって。
映画化される(間もなく公開)というのは後から気づきました。

特別な余韻が残る作品。
R-18書籍というものを初めて読んだが、確かに濡れ場が相当エロい。
氏のデビュー作らしく、編集さんとそこを狙ってのことなのだろうと思ったが、解説によると、この人の作品は他のもこうらしいから、表現に完全に組み込まれていると解釈したほうが良いのかな。
僕など、文章でこういうのを読んでも特段嬉しくないから、省くわけにはいかなくてももう少しあっさりしてもらいたいが、であれば仕方ないのでしょう。
しかし、そのことを差し引いても、十分に完成度の高い、作家の非常な才気を感じる個性作だ。
5つ6つの短~中編が連作をなす構成。だが、そのそれぞれは、時系列に並んでいるわけでもない。
第1部が映画での主人公にもなる朝霧(映画では主人公の安達祐実)の物語。
おっと、その前にこれは吉原の遊女・花魁の話ね。
第2部はその又妹女郎が主人公、逆に第3部では朝霧の姉女郎が主人公と時間的には前後していく。
色町の独特の風情の中、哀しい身の上を持った遊女たちが、意地や諦観、そして恋の花を咲かせていく、華やかにして哀しい物語群だが、もうひとつの魅力が、角田作品などに見られる、光を当てる個人が変われば見方がガラッと変わるという例の手法の成功。
そして、最終話にまったく思いもしなかった人が主人公に選ばれた段階で、全編の深みが一気に増すのだ。
「あっ、最後はこの人か。これは参ったなぁ」と、僕はなり、最終部を読む間はずっと花がツンと来た状態だった。
作者に完全にやられましたね。
本当に良い作品だが、僕が特にこの手のものに弱いという側面もやはりあるかと。
映画のスチールであるこの写真を見てほしい。

朝霧の妹女郎八津が、大好きな祭りに朝霧を連れて行った場面(だろう)。
こういう背景だけを知ってこの写真を見て、皆さんはどのように思われるだろうか?
僕はこの小説を読んじまってるせいはあるにしろ、この写真だけでもうたまらなくなります。
安達祐実のほうじゃなく、横の女の子のほうね。
この幸薄い遊女の幼げな笑顔。運命を受け入れてしまっているような笑顔がギュッと僕の心を掴んでしまうんだな、きっと。
僕はやはり女子に頼られることに弱い。つまり、女子の見せる弱さや哀しさにグッときて、「よしっ、俺が絶対なんとかしてやる!」と思う人間だからこそ今の仕事をずっとしてきてるのだろう。
そういう自分にとって、こういうはかない笑顔はまさにツボというか弱みみたいだ。
華と哀しさ、そしてエロス。見どころ十分かつ、構成の技巧も鮮やかなこの作品は大いにお勧めできます。
ただし、最後にもう一回言っておくけど、やっぱかなりエロいっす。そこだけ注意!
83点






