ブラ1は、おもしろみ的には充分ながらも、やっぱりちょっとごちゃごちゃしてしまった感がある。
ブラームスはその後、2番・3番と同じ轍は踏まず、形式にしっかりまとまった傑作を書いたが、今度はネタ的に及ばなかった。
「及ばない」って何に?
それは今までに散々言ってきた通り。
ベートーヴェンのメジャー交響曲レベルには及ばなかったということ。
え、なに? あれだけ言ってて、ブラ1は「及ばずレベル」なの、って?
ごめんごめん。実はそう思ってます(笑)
でも、ちゃんとあるよ、そのレベルまで行った曲。私見では、少なくともブラームスの4番とチャイコの6番はそこに並べられるものだと思う。
今日はそのうちのブラ4。
ベートーヴェンは健全すぎた。
もちろん、曲の中に愉悦性の高い部分しかないわけでなく、暗く沈んだものも描いた。
でも、所詮、それらは、その後の大勝利を前にしての屈身でしかない。
絶望に沈んでいる時でも、その後におりゃおりゃ伸びあがってくるのがもうわかっている。この男の無尽蔵のパワーがウザくも後ろに控えている。
●ブラームス交響曲第4番ホ短調作品98
それに比べ、ブラームスは4番で、本当に黄昏ちゃっているままを描いた。
ヨーロッパ人の思う黄昏は、日本人のそれに比べて、やはりナルシスティックというか色彩が濃い。この曲をよく「枯淡」と表現するけど、でも欧米人の枯淡は、東洋的なものよりももっと能動的に味わう感じだ。それでも、ベートーヴェンとは違う、その後の盛り上がりのためでなく、浸って終わってしまう気分を描いた。
だから、終楽章が珍しくアップテンポではなくスローなのだが、その分第3楽章を爆発的な元気さにしてバランスを取っている。この第3楽章こそ、オケがうまけりゃ後は誰が振っても変わらんような内容だが、それ以外の第1・2・4楽章は全部最高級に聴きごたえがある。
最初に、ベートーヴェンと同クラスに至ったのか?と言ったけれど、このように3つの楽章で非常に感動が大きく、残る第3楽章とて快感は強い、となると、ベートーヴェンでもこれほどの曲は果たして書いているのか、と思えちゃう。それくらいの曲だ。
ただ、ちょっと暗いので、聴きたくない日というのは確実にあるけどね(笑)
●http://www.hmv.co.jp/product/detail/2781242

ブラームス交響曲第4番ほか ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団
演奏はワルターの再登場となった。
CDのチョイスは、僕の好みによる偏りが出ないよう、世評というものをちゃんと調べながらやっていて、今回のブラ4でも、このワルター盤以外に、クライバーなど同クラスの評価のものを聴いたけれど、それらと比べても、ワルターの「ここはこの音(とこの音)を聞かせよう」「この部分はこのように演奏しよう」という決め込みの徹底ぶりは群を抜いてうまいと思う。
なのに、彼のリハーサルは徹底的に厳しく磨きこんだ、という種類のものでなく、「そこもっと歌って~」みたいな緩めタイプだったというから驚く。それでどうやってこれほど表現性の高い演奏ができるのか? 天才の業というのは想像の外にあるものだ。
この盤ではもうひとつ、ちょっとテーマ性を持たせて推薦してみたい。
●http://www.hmv.co.jp/product/detail/4126786
ブラームス交響曲第4番ほか スクロヴァチェフスキ指揮 読売日本交響楽団
これはSACDプレイヤーを持っている人、買おうと思っている人にベストなのだけれど、「現代最高級に音の良い演奏」として聴いてみて欲しい。SACDとして聴けない場合は、普通のCDプレイヤーで十分に楽しめるが、それよりもi-podで聴くのがお勧め(ついでに言うと、i-podはヘッドフォンをちょっと頑張って1万円くらいのものに変えると音が見違えるくらい良くなるよ)。演奏も「歴代1位」とまではいかないが十分に素晴らしく、そのために「良演+最良音質」が、「最良演+普通音質」に買ってしまうという、少し残念なことがやはり起こりえてしまうというわけだ(実際、僕はこのCDが今は一番好き)。
オケが日本のオケ、しかも読売日響なんて、超一級でもないはずなのだけれど、音はウィーン・フィルくらいにしか聞こえない。
僕らも写真修整とかでとんでもなことをやり遂げちゃうけど、録音の世界もどうもそんな感じのようで・・・。ちょっと笑えん話でもあります。







