1973年の映画。スティーブ・マックィーンの脱獄もので、何度もトライして失敗するたび懲罰房に入れられる・・・というと『大脱走』ともろ被りのようだが、そこはさすがにだいぶタイプの違うものにしてある。

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彼の不屈の精神が最大のテーマであることはやはり同じで、また、どんなに凄惨を極めようと、どこか男のロマンというか、鼻歌がかすかに聞こえるような爽やかさを伴うのは、この俳優独特のものだろう。

そして、これもまた『大脱走』と共通なのだが、テーマ性以上に各シーンが本格的に作りこまれており(演技、カメラなど)、いかにも映画を観たという満足感が強い

懲罰房の過酷な環境に急激にやせ衰えていく姿はもちろん、前半のワニを捕獲させられる時のリアリティなど、主要エピソードと言えない場面までも見事なのだ。

最近の映画は、どうしてもストーリー展開に意外性を求めるためセリフが多くなり、僕くらいでも追いかけるのに必死になって、オツム弱めに人は全然わからないのでは?とおせっかいなことを考えてしまうが、こういう、セリフは少なくても映像でしっかり展開と人間ドラマを見せられる映画には戻れないものだろうか?

検問のピンチを逃れるためパールを用いて修道女を買収する機転と、2度目にはそのパールを押収したい欲のために修道院長に売られてしまう展開など、どちらも説明なしの映像だけで、十分意外性にドキドキさせられる。

しかし、最終盤の離島に隔離されてからの20分間をどう見るか。スリリングでなくてもホフマンとの違いを浮き彫りにしていくなど十分なドラマがあると見る人もいれば、やはり弛緩してしまって残念という人も多いだろう。

それ(後者)が現代人の感覚であることも否めないことで、僕自身先のように述べながら、それもまた仕方のない変遷だよなぁ・・・とも思ってしまうわけです。85点

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