マーティン・スコセッシ×ロバート・デ・ニ―ロの『タクシードライバー』に続く(並ぶ?)代表作である。1980年。

作品としてはやはり『タクシードライバー』が上になるだろう。
その斬新さ、時代性、そして世相や映画に与えた影響が断然違うであろうから。
しかし、実際見ていて楽しいのはこちらである。デ・ニーロの演技力はわかりやすく、アクション・シーンが多いのも男好きがする。
デ・ニーロ演じる破滅的な性格のボクシング世界チャンピオン、ジェイク・ラモッタはしかし、実在の人物であり、本作は彼の自伝を元に作られている。
どこまでが真実であろうか。本当にこんな人物が周りにいたら、恐怖で10円禿げが100円につながってしまうだろう。
とにかく嫉妬深くて手が早い。そういう人は実際にいるが、その人種のチャンピオンと言えるレベル。さらに、ミドル級世界チャンプの腕っぷしなのだから、超短期な男がいつも凶器を手にしているのと変わらない。
それをデ・ニーロ・アプローチで演じきったさまはまさに壮観。これぞ(ひと世代前の)役者の究極・完成形であると言い切ってよいだろう。
最初は笑みを浮かべながら、「今のはどういうつもりなんだ?」と聞いてくる。言われた方が3割がた凍り付きながらも、まさかこれで本気で怒るか?と思っていると、目の前でどんどん加熱していき、ヤバいと思った時にはもう手が飛んでくる、というあのパターン。今ではわりとよく見るキャラだが、その元ネタ、あるいは完成形がこのデ・ニーロの演技なのだろうね。
しかし、それ以外には別段みるものもないかな、というのがこの作品の弱点か。ベートーヴェンの「運命」のように、主題だけにみちっと煮詰まっているが、その純度ゆえに遊びがないみたいな83点