有名な映画だが未見で。楽しみにして観たのだが、まさかこんな感じとは。
ネットのレビュー(イマイチと感じたときに見ます)で多くの人が言うことのうち、セリフなしに歌っていることの違和感は、グランドオペラ慣れしている身としてはさほどない。
また、「テーマ」という名曲がよいと皆言うが、聴き慣れすぎていて、どちらかというと辟易。『ティファニー』における「ムーンリバー」と同様だな。
そうではなくて、僕の思いは、この、ものすごく露骨にファッショナブルな映画で、なにかリアリティを感じられるのか?という不思議。
色彩感に拘って、前編ものすごくカラフルなのだが、それ自体が物語への没入を阻むだけでなく、実際に、貧しいと言っている傘屋さんが豊かな生活をしている、という齟齬を生んでいる。
また、カメラワークも、「やってみたいことやってます」感丸出して、これも観衆を俯瞰位置に阻害しがちかなと。
つまり、これらのファクターは、「ちょっと距離を置いて観てくださいね」という種類の映画にもってこいの設定なんだな。いや、それ自体は悪くないのです。
僕は、ベートーヴェンならジョージ・セルという指揮者のものを最も好むが、この人は音楽を完全に突き放して、いわゆる「純音楽的に」演奏している。迫力はあるが、感情移入はゼロに近い。それがクールで、すごく快楽的なのだ!
だから、この種の映画が嫌いなわけではない。ところが、本作は、例の楽曲「テーマ」はメロメロのロマンティックさであり、最後は泣かせに来ているようで・・・どっちやねん!?
ドヌーヴの美しさを見るのが半分くらいの興味だったのだが、3種の髪型のうち、有名なハーフアップは、髪が煤けているのが、今回の”デジタル・リマスター版”では否応なく目立ってしまったし、二つ目の耳が隠れるスタイルも、ちょっとしんどかった。
最後の場面のセレブ風アップが、実際最もしっくり来て、そのシーンが最も美しかったと思うが、その場面自体が少なかったので・・・正直、全体として予想を下回るものでした。
現代において感動することは難しい作品、と僕は思う。60点。
