Takumi Blog

タクミな話

三谷版『オリエント急行』に物申す。

先日テレビでやっていた三谷幸喜版『オリエント急行殺人事件』を観た。

cx_orient0914-2

もちろん原作はアガサ・クリスティーである。というか、僕は、学生くらいの時に映画を観ているし、30歳代に小説を読んでいるのだがストーリーを全く覚えていない。本当に情けない記憶力なのだけれど、そのおかげでまた今回もハラハラドキドキと鑑賞できるのだから、記憶力の欠如というのも有益ではあるのだ。
3時間弱放送が2夜という大部な構成。第1夜がクリスティの原作通りに犯人が分かるまで、そして第2夜が三谷創作の犯人が殺害を決意、実行し、探偵に暴かれるまでとなっている。三谷流だからドタバタ劇というに近い。
第1夜は非常に楽しかった。出演者も錚々たるメンバーで、彼の作品らしい遊びを散りばめつつスリリングな原作の良さ(覚えていないのになんだけれど)も生かされている。
でも、ホンチャンは当然第2夜となろう。第1夜にも創作性はもちろんあるが、こういう構成にしてしまえば、第2夜こそが「創作部分」と目されてしまうのは仕方ない。
そして第2夜である。これが、僕的にはだいぶ空振りだった。
第1夜より明らかに落ちてしまったのである。
まず、長いのかな。第1夜や本編後の予告で予想できる範囲をほとんど超えていない。なのに3時間なりの枠を埋めなければならない、というこの時間的制約が大きかった気がする。
不幸な事件から殺人決行に至るまでを、基本コミカルに描いているのだけれど、これは案外、いつもの三谷流というだけでなく、意外に人間そんなもんだよね、というリアリティの表現でもあるだろう。しかし、その十八番の演出のはずが、それこそ意外にもあまりおもしろくないのだ。
その理由なんだけど、僕ね、普通に「手抜き」なんじゃないかな、と思うんですよ。
どういう経緯でドラマ化されたネタか知らないが、例えば、そもそもこれほどの規模に見合うものじゃないのにゴーされて、そこを真剣に詰めなかったとか、そういうことじゃないかと。
だって、このパターンって、今の三谷幸喜作品の必勝パターンになってて、量産されている気がするのです。
古典的題材を下敷きに、キャラクターのある程度確立された人たちの意外な本音を赤裸々に語らせ、笑いを取っていくタイプ。
僕の知っている限りでは『巌流島』という演劇で、役所広司に宮本武蔵をさせて(NHKでもやっていた!)にグダグダ逃げまくってるさまを描かせたのがまったくそれ。その時にはもちろん驚きはあったが、ひょっとしたこのあたりが本当に「走り」で、味を占めてしまったのではないか。
先の『清州会談』もこのタイプだし、未見だが去年の『紫式部ダイアリー』も同様で、清少納言と紫式部が情けないような本音バトルを繰り広げるものらしい。なるほど、考えただけでクスっとくるようなネタだ。しかしである。
三谷さん、こういうことをやってるとダメになっちまいますよ!
だってこれって、歌のリメイクと全く同じ手法じゃないですか。
「贈る言葉」をハードロック調にアレンジして出てきたバンドがいた。メロディーになじみがある(直木賞的大衆性)、アレンジされたことで新しいものに感じる(芥川賞的創造性)を兼ね備えるので簡単に成功しちゃうんだけれど、でも、前にも言ったことがあるが、こういうのは「世に出てくるための1回きりの反則」にしないとダメだ。反則やめとけっていうのもあるし、二流感が染みついてくるのでアンタのためにならんよ、もある。
いっぽう三谷幸喜と言えば、押しも押されぬ大作家である。売れっ子であるだけでなく尊敬もされている。
そんな人がこういう安直な手法を連発してはダメ。簡単にできちゃうのだろうけれど、それに頼るくらいなら作らない方がいいのではないでしょうか。
もっとも、三谷さんのほうでそれくらいは十分承知、という可能性もある。そこで、この「オリエント」だ。
なんらかで企画が上がった時、あるいは「来春早々?困ったなぁ~」「まあ、最近よくやってるこのパターンで良ければちょちょっと書きますけどね。」「誰でも知ってるような古典。何がいいですかね?」みたいなお手盛りの経緯でできてしまったのではないか。そういう気がする。
配役やセットも豪華だったし、観た者からの批判も大きくは上がるまい。
でもね、思ってるほどこちらもバカじゃないんですよ。
前篇を2時間、後篇を1時間にまとめて3時間クラス1本に縮めれば、彼の傑作の一つとして後世に残ったかもな、とそのように感じました。

次に読むなら

『天使にラブソングを』映画版

なかなか有名な作品だが、恥ずかしながら初見でした。そして、思っていたよりもはるかに良かった。 ストーリーはシンプル。ハスッパなナイトクラブ歌手が思わぬことから修道女となり、そこで引き起こす悶着と、合唱指導を通してお互いが

Read More »

究極のデブキャラ『スクール・オブ・ロック』

学園もの音楽劇・・・でいいのかな。非常に楽しくて、後半は涙もボロボロ。最近見た中でベストの作品と言っていい(この後『マッドマックス怒りのデスロード』を観て、これは更新されてしまったが)。 ロック・バカすぎる男が自分の作っ

Read More »

『スワロウテイル』は邦画の金字塔

3度目の視聴となる。公開が1994年だから初見時は30歳くらいだったのか。さすがに少し古ちゃちいシーンもあったが、全体としての価値は衰えていないと感じた。 まず、強い円を求めて流民が群がる虚構の街イェン・タウン(東京の呼

Read More »

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』

エイリアンが一株の花に成りすまして地球で住まい、人類の制服を目指す・・・というB級ホラー作品(映画あり)の、さらにミュージカル版の映画化作品。 音楽も悪くないし、セットやダンスの雰囲気も良いが、実際かなり退屈した。最近観

Read More »

『ピンポン』はちょっと期待外れ

2002年、同名コミックを実写化した作品。十分におもしろいけれど、まあこんなもんだろ、という感じ。 原作は1冊くらい読んだことがあったか。続けて読みたくもあったが、どうしてもというほどでもなく。なんとなく展開が予想された

Read More »