Takumi Blog

タクミな話

あなたがもし絶世の美女だったら?・・・歌劇「マノン・レスコー」

9dd119da.jpg僕が最も好きなオペラのひとつが、プッチーニの「マノン・レスコー」です
音楽も素晴らしいが、物語もものすごくいい。
プッチーニの中では、蝶々さんとマノンは、ストーリーは単純で弱いが音楽はいい・・・というのが一般評ですが、僕は全然そう思わない。
まあ、それはさておき、今日はマノンの物語の話をさせてください。
①(第一幕)酒場で学生たちが飲んで騒いでいると、兄に連れられたものすごい美女が登場する。彼女こそマノン・レスコー。若い身でありながら、修道女になるための道中だという。
②彼女にとりわけ魅入られたのは、才能ある学生であるデ・グリューと、金持ちヒヒ親父のジェロント。
③ともにかっさろうとたくらむが、兄が賭けトランプに興じる間にマノンを口説き落とし、(実はジェロントの用意した)馬車で逃げ去ったのはデ・グリューの方であった。
④しかに、両名の姿を見ながら、マノンの兄はジェロントに「学生の財布はいつだってピーピーだが、マノンは貧乏が大嫌い。そのうちあなたはマノンのパパになれますよ」と予言する。
⑤(第二幕)美しいドレスを纏い、輝く宝石に囲まれて、鏡に映る自分の美しさに興じいるマノン。
⑥その後、デ・グリューとの貧しい生活に疲れ果てたところを兄が見つけ出し、ジェロントにつなぎを付けていたのだった。
⑦パーティーの華としてその美貌を周囲に見せつけるマノン。いったん着替えに自室に戻ると、そこに突然デ・グリューが現れる。
⑧マノンを奪われ復讐に燃える彼に、博打を教えたのは、またもマノンの兄。彼はその道の鬼と化し、財を得てマノンの前に姿を現したのであった。
⑨数々の恨みの言葉を用意した彼に、意外にもマノンの目はハート。「おお、私の永遠の恋人よ。もう一度あなたのかわいいマノンを抱きしめてくださらないのですか?」ってな感じ。
⑩デ・グリュー「不実な女め、お前は知らないのだ。僕が暗く侘しい日々を送っていることを」と抵抗を試みるもあえなく陥落し大抱擁。
⑪様子見に現れたジェロントが当然怒るも、恋に燃えたマノンに「あなたとわたしが恋ですって?鏡を見て私と見比べてみたら?」とまで言い放たれる。
⑫ジェロントが告訴し、警察が捕縛に迫る。すぐにも逃げ出さねばならないのに、マノンは自分の(?)宝石をかき集めようとしてグズグズする。その姿に失望するデ・グリュー。そして、ついに逃げ遅れ、マノンは捕縛されてしまう。
⑬(第三幕)監獄に兄とデ・グリューがやってくる。脱獄させようとする兄の試み(この人ほんまにムチャクチャ)もむなしく失敗し、マノンは未開の地・アメリカに島流しに。
⑭しかし、必死で同行を求めるデ・グリューの願いは聞き入れられて、船夫としてともにアメリカに渡ることになった。
⑮(第四幕)荒野を疲れきって歩む二人。飢えと渇きにマノンの体力は限界に来ていた。
⑯最後までなんとか彼女を救おうとするデ・グリューの傍で、飽くまでも最後まで煩悩バリバリのマノン。「もうだめだ。いや死にたくない。あなた助けてください。もうだめだ。いや死にたくない。あなた・・・」ってなセリフを繰り返した後昏睡。
⑰最後に「あなたのマノンを覚えていてくれますか?私の罪は忘れられても、私の愛は消えない」と言いながら、ついに死んでしまい、デ・グリューもまたあまりの悲しみのため失神してしまい、最後の幕が下ります。
どうですか?
なんか、突っ込みどころ満載でしょう??
僕が大好きなのは、主人公マノンが、煩悩満載のいわゆるどうしようもない女でありながら、その美しさ+奔放さのセットゆえに、デ・グリューが、そしてプッチーニが彼女を心底愛していることです。
知性にはあまり恵まれず、一方美貌には存分に恵まれ、そして奔放さや淫乱さを併せて生まれた女性が、このような性向・言動を見せることに何の罪があるというのか!
自分の彼女としてはちょっと無理・・・とは思いますが、そうでなければ、僕は断然肯定派です!!
一方で愛とセックスの甘美さを求め、一方でゴージャス感に満ち溢れた自分に魅入られてしまう・・・。その二つともがまた飛びきり程度が高いのが美女たるが所以。
学生は未来を捨てるわ、金持ちヒヒ親父は財産崩すほど使うわ・・・
そんな彼女は、その行いを心底悔いるでもなく、流罪の荒野に倒れ、最後まで生きたいとあがき、恋人の人生に対して心から詫びるでもなく死にますが、一方でデ・グリューは一切の恨み事を述べず・思い浮かべず、ただひたすらに恋人を失って打ちひしがれます。
僕は、これ「なんていい話なんだろう」って思う。
マノンのリアルな生への執着。デ・グリューの純愛・・・。もう最後は涙なしには聴けません。
・・・と、もちろん、一般的には美談とも言い難い物語であることも承知の上ですよ その上で、申しています。
“もし、あなたが絶世の美女だったら”と、『前提を変えて』(失礼)考えてみてください。
貧乏な学生との生活と、金持ちヒヒ親父との生活のどちらを選びますか?
こんな超自己愛・自己中の女性を許容できますか?
未来を失っても美貌の女性を求め続ける男性の愛を「純愛」と感じますか?
僕はものすごく奥の深い話だと思うんだ

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