先日劇場で観てきました。
いやぁ、ひとことで言って素晴らしかったです。予想以上だった。

劇場で観る、圧倒的な映像、そして音響。これだけでアニメ版を圧倒してしまう。
さらにストーリーもよりこなれています。
お互いが、進取・革新的気質であるからこそ惹かれ合うという側面を強調。特にアリエルが初めて人間世界の町中(市場やお祭り)に出て、王子そっちのけなくらいにはじける場面を長く描くことで、エリックが「追い求めている歌声の女性とは別に」恋に落ちていくという流れに。
アースラが化けた偽アリエルが登場するまで、エリックにとってアリエルは「最愛の歌声の女性を超える、新しい想い人」に育っていくわけで、そのことに気づかせる執事の言葉も素晴らしいし、アリエルが声を取り戻した時、二人の恋焦がれる女性が一人に合体したことになり、エリックからするとまさに”ワオ~っ!”となってしまうわけ。
二人の純愛性が、より際立って見えました。
もちろん、その代わりに削られてしまったシーンもある。特にセバスチャンとシェフの追いかけっこが無くなったのは寂しいかな。
でも、それを差し引いて余りある変更だったと思う。
最近のディズニーらしい先進性は随所に見て取れました。
本丸の話は後ろに回して、まず「ルッキズムの排除(比率減少)」が僕には際立って見えた。
アリエルの「あの人ハンサムね」や、エリックの「君って素晴らしいな」などお互いの外見を褒めたたえるセリフはカット。
トリトンが銅像を破壊した後も、頭部ではなく、手の部分を触りながら嘆きます。
特にエリックが初めてアリエルを見た時、「歌声の女性でない」と確認しただけで興味消失。彼女の外見に一切関心を見せないという演出は、かなり踏み込んだと思う。
そこで本丸の話。黒人のアリエルを持ってきたことですね。
一応、歌唱力が主な選定理由としているが、それは表向き。しっかりと狙いはあるでしょう。
ネットなどで見る世の評価は「二分」以上に厳しい。そこに黒人差別がある・・・と思うのは短絡で、日本人はいまや最も黒人差別意識のない非黒人民族ではないか。そうでなく「アリエルは白人でないとイメージ違いすぎる」と「黒人でももっとかわいい人なら全然いいのに」の2つの失意の声と読んだ。
僕自身は、映像やストーリーが素晴らしくて「気にならないかな」という感じ。顔立ちは嫌いではないが、眉が薄すぎて、眉上に傷かと思うほどの表情線が入り、生え際の縮れ毛ともどもおでこばかりに視線が取られることは、それなりにマイナス点ではあった。
そして恐ろしい最後の想像。ひょっとして、テーマをより純化させるために、「わざと外見のすぐれないヒロインを選んだのではないか」。これで美人だとテーマ性がぼやけてしまうからね。もちろん、ウエスト周りとか抜群にきれいだし、笑顔とかキュートで、やっぱり見ているうちに可愛く見えてくる範囲ではあったけれども。
今回の反応も見ながら、今後ディズニーは、作品によっては「美女でないヒロイン」を用意してくるのかもしれない。既にアナ雪のヒロインは美女でない気もするし。
そして、それは映像作品の進化として、絶対に正しい一方向だとも思うもの。90点