これぞ小津の代表作『東京物語』 2023/4/15 By Leave a Comment 1950年代、日本の映画が世界の賞レースを席巻していたことを皆さんはご存じだろうか? では、その中心に位置する映画監督こそが、黒澤明氏ともう一人、本作の監督である小津安二郎氏であることは? そして、この二人の芸風こそが、映画というものの、2大本流として意識されているのだと思う。黒澤はエンタメ・アクション、小津はホームドラマだ。歌舞伎の荒事と世話物みたいな関係だから、日本人には当然だったか。 僕は正直、邦画というもの自体があまり好きではないので、少ししか観てきていない。 若い時に黒澤と「第3の男」と呼ぶべき溝口健二作品は少々観たが、小津はなんとなく敬遠してしまっていた。 山田洋二作品はわりと好きなので、その師匠筋になる小津作品も、いつかは観ようと思っていたが。 その小津安二郎の代表作と言えば、掛け値なく本作『東京物語』になろう。公開時に目立った受賞こそないが、その後の評価は非常に高く、95年キネマ旬報の邦画歴代1位、2012年の英国映画協会、映画監督が選ぶ映画史上の1位に選ばれるなど、すさまじい評価を得ている。 実際に観て、そこにあったものとは・・・? 「あまりものリアル」そして「原節子」です。いや、「笠智衆の老け役」も足していいか。 最初のはもう、何でしょうね。老父が大きくなった子供たちを訪ねて東京に出てくるが、もうかわいらしかった頃の面影はあまりない。そのことを「それぞれの生活ができてしまえばそんなものだから」と受け入れようとする姿の寂しさ、仕方のなさ。現代の映画に比べてもなお容赦がないことは素晴らしく、小さい子供を持つ親としては勘弁してもらいたいくらい(笑) その老父を演じるのが笠智衆なのだが、このジジイを演じた時に、彼はなんとまだ50より手前!小津監督に「君が老け役が合う」と言われて、若くからその道に進んだとはかねてより知っていたが、それにしてもあまりにもジジイで、まじビビるわ~。 その老父が実子たちに寂しさを覚える中、亡き次男の未亡人でありながら、実の子よりも老夫婦を気遣ってくれる、というオイシイ役どころを演じるのが原節子である。 日本の「三大女優」というと、山本、京、若尾ということになるが、邦画の№1アイドルはこの原節子で決まりじゃない? あぁ、吉永小百合がいるのか。失敬。その世代までいくとそっちだね。 音に聞く原節子。なるほど~、こんな感じ(の使われ方)か~。 ちょっとキモイ気もするかな。なんか、周りのジジイたちが天使扱いしすぎているのがわかる。しゃべり方も、この役の設定でお嬢さんすぎて変だし。 これだけリアルに作品作っても、「ヒロインかくあるべし」みたいなものからは離れられなかったのかなぁ、小津もって感じか。 いや、勉強になりました、色々。そしておもしろくないということはない。 しかし!です。 この映画には「半リメイク」と呼ぶべき作品がありまして、今からならそちらをご覧になるべきかと。 先述した通り弟子筋に当たる山田洋二監督が撮った『息子』(91年)がそれで、老父の三国連太郎が東京の息子たちに会いに行って色々と悲哀を感じながらも、一番頼りなかった次男?との交流で意外にも・・・いや、ここからはやめておきましょう。 こっちは今観てもかなり感動的だと思う。 映画史上の重要作品という意味では断然『東京物語』だが、似たようなものでより感動したいという方には『息子』をお勧めします。 ・・・という変な結び方で終わって、さてよいものやら?70点
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